こども病院建替え工事費 1.5倍に水増し
吉田市政「検証・検討」の欺瞞を露呈
福岡市の人工島事業「検証・検討」報告書に記されていたこども病院現地建替えの工事費用の一部が、積算根拠のない「口頭」でのやりとりによるものだったことが明らかとなっていたが、全体の工事費そのものが「ねつ造」ともとられる水増しした数字だったことが判明した。
検証・検討では、こども病院の現地建替えについて、工事費を128億3,000万円としたうえで、現在の建物の解体や仮設など、ローリングにかかる費用を約42億8,000万円(工事費の約33%)と記していたが、この数字に積算根拠がないことが判明していた。(昨日既報)
新たに分かった事実からは、工事費算出の基礎となる数字を、福岡市側が大幅に膨らませており、ねつ造ともとられかねないその手法に、早くも批判が集中している。こども病院人工島移転の根拠とされてきた「検証・検討」の内容に、現地建替えを回避するための「ねつ造」があったことは、移転の前提が崩れたことを意味している。
福岡市は、市民病院・こども病院の統合移転計画を検証・検討して「見直した」としてきたが、こども病院の現地建替えの是非を含む、ふたつの市立病院の経営分析業務を東京本社の業者に委託していた。
この業者は、従来の「統合移転案」推進のアドバイザー業務を請け負っていたことから、お手盛りの検証・検討であったと同時に、業者が市に提出した「福岡市立病院経営分析報告書」には、こども病院の現地建替え案のデメリットを強調し、この案を排除する方針が明記されていたこともデータマックス取材班の調べで明らかとなっていた。
業者の報告書には同病院の現地建替えにかかる工事費として、85億5,000万円が計上されていたが、福岡市の見直し案である「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業 検証検討 報告書」では、128億3,000万円かかると記されていた。
差額の42億8,000万円について、福岡市の元担当課長に聞いたところ「実績のあるゼネコン3社に口頭で聞いて回った。それなりの信憑性はあると思っている。積算根拠は、といわれればない。」と語っていたが、その後の調べで、工事費全体を水増しし、大幅に増額したものを検証・検討結果として公表、現地建替えには多額の費用がかかるように見せかけていたことが浮かび上がった。
業者作成の建替え工事費の内訳 | 「検証・検討報告書」は工事費が大幅に水増しされていた |
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水増しの手口 「1.5倍にしただけ」
業者が市に提出した報告書では、現地建替えの場合の工事費を85億5,000万円、このうち10億6,000万円を仮設や解体工事費(市の表現では『ローリング費用』)としており工事費全体の12.3%を占めると明記している。
これに対し、福岡市の検証・検討は、業者の提出した報告書をそのまま使いながら、工事費の数字だけを大幅に増やしていた。担当課長によると「ゼネコン3社に『業者の報告書』を見せた。実際の工事では、(85億5,000万円という業者見積りの)1,5倍くらいが妥当ということだったので、(128億3,000万円に)増額した」と明言した。
1,5倍の根拠について追求したが、「ゼネコンの実績に基づくもの」という薄弱な根拠しかないという。改ざんではないかとの質問には「そうではない」とするが。建物の建設工事費を10億6,000万円増やし、新たに42億8,000万円ものローリング費用を創出したことになってしまう。公共事業に積算根拠がないということは考えられないことであり、その点についても問いただすが、満足な答えは返ってこなかった。ゼネコンに相談した記録もないとしており、架空の水増しといわれても反論できない状況になっている。
水増し「吉田市長は知っていた」担当課長明言
市政を揺るがす重大問題に
業者の出した85億5,000万円を1,5 倍にしたことについて、吉田市長は知っていたのか、と聞いたところ担当課長は「ご存知です」と明快に答えた。吉田市長は、適当な水増し数字で「現地建替え」を否定した事実を知っていたことになる。
人工島事業及びこども病院の人工島移転を「見直す」とした公約は嘘だったということにほかならない。また、現地建替えの可能性を否定するため、吉田市長が公言してきた「財政的な問題」が、実は架空ともいえる数字に基づくものであったことになり、市民に対する重大な背信行為として批判を受けることは必至と思われる。いずれにしても、「検証・検討」報告の欺瞞が明らかとなった今、同報告の結果を軸にこども病院移転地を決めるとしてきた吉田市政は、前提が崩れたことを認識し、作業のやり直しをするべきであろう。
また、この状態で市長案を通過させるとしたら、市議会に対する不満も爆発する可能性が出てきた。