《航空機の技術革新と空港》
それともうひとつは、「3,000mの滑走路がなければハブ空港の機能を果たせない」という論議が以前ありました。大型長距離輸送機には3,000mの滑走路が必要であり、福岡空港では難しいということでした。
ところが、昨年シアトルのボーイング社の本社を訪ね、ボーイングの新しい中型機開発を調査してきました。機体を日本の東レのカーボンで造っている機種があります。機体のみを東レに発注し日本で製造するのです。この新型中型機の機体はものすごく硬く軽量なのです。エンジンなど他の部分は別の会社で造り、シアトルではそれらを集め組み立てるわけです。東レは、この新しい機種であるボーイング787の開発にはずいぶん出資しています。機体の軽量化で燃費も上がり、燃費が上がれば燃料積載量を減らすことで、離陸時の滑走距離が短くなります。福岡からニューヨークまで1万1500キロ、ワシントンでも1万1400キロあり、現福岡空港の2,800メートル滑走路では積載燃料の重量の関係で飛べません。しかし、この中型機になったら3,000メートルもの滑走路を必要とせず、現在の福岡空港の滑走路で1万5000キロを飛行することが出来ます。
短い滑走路で1万5000キロを飛行できるとなれば、おおかたの空港から直接、最長距離の空港へ直行することが可能になりハブ空港論がなくなってしまいます。どの空港からでもダイレクトに遠くに飛ぶ事が出来るということです。安全性も含めた航空機の技術革新がずいぶん進歩し、空港間をダイレクトに結ぶことが可能になりつつあり、効率化が進んでいるのです。こうした情報について国交省は全容を知っているはずですがまだ明らかにはしていません。福岡空港の議論を進めるには、既存の航空システムや飛行機の機能など技術革新が進んでいますが、そのことについての情報分析が十分になされていないと思います。最大会派の自民党としての意見をまとめるには判断の材料がそろっていない、ということです。
―とすればいままでのハブ空港議論を超えたものとして議論されねばならないということでしょうね。
藏内/
全日空はボーイング787をすでに10数機発注していると聞いています。このような機種が飛行することになったときの論議も大事だと思います。海上空港を造って、24時間安全に運用でき、福岡に高層ビルが建設され、さらに福岡都市圏の利便性が向上することが理想でしょう。しかし理想どおりにはなかなかいかないものですから。
《今後の論議の行方》
―人口が増加し、経済が大きくなっていくという前提でハブ空港議論がされてきました。福岡市も今は人口が増えていますが、今後は減少時代に入っていきますから。
藏内/
わたしにはその予測がつきません。例えば15年前に、「国内の石炭はオーストラリア石炭の3倍のコストだから国内炭は使わない」と言われていましたが、原油高などで同じ値段になりました。当時だれが予測できたでしょうか。これだけ世の中の変化が速いのですから、需要予測など素人のわたしには出来ません。「公」は意図するところに落とすために予測を立てがちでありますが。
―ステップ4が始まりますが、今年度末までには空港議論は収束するとお考えでしょうか。
藏内/
知事次第だと思います。知事がひとつの答えを出したいと考えているかどうかです。わたしたちはあくまでも県の方針をチェックする立場ですから。
―知事の立場はぶれていると聞いていますが。
藏内/
知事がぶれたかどうかは直接聞いていません。空港建設は国の権限が大きいのですから、国がぶれたら仕方がないところはあるでしょう。議会はいろんな意見を発言できますが、知事はそういうわけにはいかないでしょう。その意味では国の意向はとても強いものです。
―自民党としての現時点の姿勢は。
藏内/
この件については特段、具体的な指示はしていません。態度決定の時は、政審会で議論を重ね県議会の本会議で代表質問を行ないます。空港問題は今時点では会派としての議論はしていませんし、議論するだけの材料がありません。
―麻生知事の判断の後に党として対応をされると思いますが。
藏内/
知事は大きな問題については情報を共有していこうという姿勢がありますから、知事が意見を固める際には議会にも情報が入ると思います。私たちの判断材料が出てくると思います。
―知事は今年度中に決断するということを言っておられましたが。
藏内/
そういう話があった、ということは聞いていますが直接には聞いていません。
―PI方式は1億6千万円を使って国の誘導する結論ありき、だという批判もあります。
もっと県民レベルの議論が必要と思います。
藏内/
その通りで、そのために議会に空港対策調査特別委員会を設置しています。このなかで、福岡空港の整備を中心に、今後の空港のありかたを論議していきます。ただし、議会側が先導するという状況にはありません。
―状況が新しく変化するなかで、今後も空港問題がもう一度議論になるということになりますね。
藏内/
空港問題は県政の大きな課題となっています。議論する時期が大事ですね。
―県民がきちんと議論できる材料の提供と活発な議論が出来るように議員としても問題提起を巻き起こしていただきたい。
藏内/
議会の大事な役割でありますが、現時点では材料が乏しいです。国の出方もわからないし、知事の集約方向も見えない中で議会がひとつの答えを出すのは困難だろうと思います。九州国立博物館誘致では、わたしはJC時代から又、県議会議員として議会主導で実現しました。しかし空港建設はあの時のように民間あるいは地方主導ではリスクが大きすぎると思います。
―県南振興との関係で空港を考えた場合、佐賀空港があるという意見もあります。
藏内/
佐賀空港を国際化することはひとつの案だと思います。しかし漁業補償等ハードルの高いものがあり、地元県南地域の意見集約が必要です。特に大川、柳川、みやま、大牟田の県議会議員の熱意が不可欠です。佐賀から福岡へは1時間で行くことができます。新しい滑走路とアクセスの整備にはそんなにコストはかからないのでは。道州制への移行を視野に入れれば、県境を越えた場所にある空港の活用を考えるということも大事だと思います。
―ありがとうございました。これからも県政をリードしていだきたいとい思います。
藏内/
ありがとうございます。
※記事へのご意見はこちら