◆ こう見る・福岡空港「かさ上案」、航空技術進捗を睨み論議を(2)
自由民主党福岡県議団会長 藏内 勇夫県議会議員
◆ 福岡空港の海上案、新宮沿岸に絞られる?!
◆ 改革派前市長による希望の提言(15) 木下敏之前佐賀市長
(2)自治体リーダーの経営力が勝敗を左右する
◆ 対アジア拠点空港としての北九州空港整備考 その87回
第一交通産業 代表取締役社長 田中 亮一郎 氏(2)
こう見る・福岡空港「かさ上案」航空技術進捗を睨み論議を(2)
自由民主党福岡県議団会長 藏内 勇夫県議会議員
国土交通省が6月末に発表した現福岡空港の増設新案がより現実味を帯びてきた。これに対して「新設」派の、劣勢を挽回する動きが活発化し始めている。
福岡県議会の最大会派―自民党県議団の会長であり、県議会最大のキーマンでもある藏内勇夫氏に、福岡県政の重要な課題である福岡空港をどうするのか、インタビューを行なった。
藏内 勇夫県議会議員(選挙区・筑後市/当選6回)
自由民主党福岡県議団会長
所属委員会―警察委員会・国際交流推進対策調査特別委員会
《空港新設は理想論》
―経済界は「新設」で動いていますが、今度の案は経済界にとってはショックではないでしょうか。
蔵内/
今里滋氏(元九州大学教授・編集部注)が出馬した前々回の知事選で麻生知事は空港問題を争点にしませんでしたが、その時点までは知事は海上空港を造るという気持ちであったと思います。当時わたしは、県議会の議長をしていましたが、わたしも争点にしないことを進言いたしました。今回、現空港の再整備案が出てきて、経済界の間で、「安全性の問題や福岡市の都市計画、将来性からいえば海上空港が必要だ」という声が出てきています。経済界の声は、わたしも理解できます。わたし自身も理想的には、安心して24時間使用できる海上空港が必要だと思います。何といっても、安全性の問題が一番重要です。あれだけ過密した中で離発着させることは安全対策上どうなのか、ということです。一度でも大事故を起こしたら現空港維持の声は吹っ飛んでしまいます。そのような点を総合して経済界が理想論をおっしゃっていると思います。ところが「現空港を閉鎖」して、新空港をどこにするのかという話になったときに、事業費がいくら掛かり、国や県が税金をいくら使うのか、そして経済界がどれだけ協力できるのかという時に、経済界は話がまとまるのかです。
《経済界は負担に耐え得るか》
―中部空港の建設は大企業が推進力を担いましたが。
蔵内/
わたしは太宰府の国立博物館づくりに奔走しましたが、その費用はおよそ200億円かかりました。県議になる前から取り組んできて、30年以上かかりました。このときですら中心となった九州電力は費用を集めるのに大変苦労されていました。国立博物館と違い空港は企業の利益に直接かかわりますからもう少しは拠出されるでしょうが、経済の状況は厳しくなってきています。海上空港には1兆円以上の事業費が掛かると思いますよ。事業費の負担額が具体的になったときに知事選も含め県民の理解を得ることができるのか、また経済界も事業費を集められるのでしょうか。
つづく
5日付け読売新聞は、国土交通省がこれまで示していた海上空港新設6案のうち、新宮町沿岸に配置する案に絞り込んだと報じた。
国交省は6月末に現空港の増設案と新設配置案を発表しているが、新設案は志賀島・奈多ゾーンの4案と三苫・新宮ゾーンの2案で、今回絞り込まれた案は新宮町沖案の沿岸に近い水深約12メートルの位置である。
報道によれば、新宮沿岸案の利点は平均水深が約12メートルと最も浅く埋め立てコストが低く抑えられること、福岡市と新宮町を結ぶ西鉄貝塚線の活用などの交通アクセスが整備しやすいこととされている。
新空港は、長さ3,000メートルの滑走路2本を300メートル間隔で並べる計画。離発着回数(滑走路処理容量)は、21,3~22,6万回、事業費は9,000億円ほどになるという。
また、現空港の増設案については、西側210メートル案が最有力としている。その理由として、事業費が2,000億円程度で他の2案よりも安く、滑走路処理容量も年間18,3~19,7万回で他の2案とそう変わらないことが挙げられている。
今回報道された内容について、国交省九州地方整備局(空港PT室)に問い合わせたが、「報道内容についてはいっさい知らされていない。東京でいろんな案が検討されているがこれで固まったかどうかはわからない」と答えた。
福岡県の空港対策局も、「この内容について国から何の連絡もない」と、この案で固まっているどうかについて回答のしようがない、とのことである。
今週中には国交省専門委員会が開かれることになっているので、いずれにしても新設、増設案がそれぞれ1案に絞り込まれ、ステップ4で議論されていくことになる。
「新宮沿岸」という報道の真偽はともかく、「新宮沿岸」案が難点を抱えていることは間違いない。ひとつは、事業費を押さえることにより新宮町沿岸に近接することになり、玄海国定公園の特別地域との関係が出てくるだろう。環境問題の観点からの批判が出そうである。ふたつめは、昨今の航空需要の変化である。原油の高騰などもあり減便や廃止が相次いでいる。人口減少社会に突入していくなかで新空港に巨額の費用を注ぎ込むことの是非が問われそうだ。
改革派前市長による希望の提言(15) 木下敏之前佐賀市長
(2)自治体リーダーの経営力が勝敗を左右する
自治体リーダーの経営力が勝敗を左右する
福岡市などの都市部と違って、佐賀市のような自治体はこれから大変に厳しいことになりますが、今の豊かさを次の世代に伝えるための策が全く無いわけではありませんでした。
その基本は、どの自治体にも共通していて、
1.急いで行革を行い、地域経済を活発にするための投資を行う財源を作る。
2.財源の目途が立てば、地域経済を活発にするための投資や、教育・子育て支援についての投資を重点的に行う。
3.人材の確保のために、教育に力を入れ、都市部からの人材還流策を講じる。
4.弱者は、一点突破の重点投資をする。
しかし、策があるとは言っても、それは非常に細い道です。今の世代は、一時期は苦労する道ですが、飛躍するためには一旦膝をかがめて沈み込むことも必要です。このことで思うのは、リーダーの経営力が勝敗を決するということです。
自治体のコストダウンで大きな効果を上げるのは、部下の日ごろの節電ではなく、大きな枠組みを変えるようなトップダウンの取り組みであり、どの分野に重点投資するかということも、大きな方向性を決めるリーダーの判断が勝敗の分かれ目となります。これから日本は全くどこにもお手本の無い高齢社会に突入しますので、部下が策を練ったといっても、はっきりと先が見える案などまず無いでしょうから。
つづく
120回連載★対アジア拠点空港としての北九州空港整備考 その87回
第一交通産業 代表取締役社長 田中 亮一郎 氏 (2)
地元企業のさらなる支援を
空港の発展が北九州を賑わす
第一交通産業 代表取締役社長 田中 亮一郎 氏
1959年4月4日生まれ。青山学院大学卒業後、朝日放送(テレビ朝日)入社。
85年7月、第一交通産業取締役。副社長を経て、2001年6月に代表取締役社長に。
タクシーを中心とした旅客運送事業と、マンション・戸建住宅開発販売を中心とした不動産事業を柱とし、様々な事業を手掛けるタクシー業界の雄、第一交通産業。北九州のさらなる発展のためには、何をすれば良いのか。同社代表取締役社長・田中亮一郎氏に、新北九州空港および北九州の街づくりのあり方について、話を聞いた。
-御社のタクシー事業との関連をどのように図っていきますか。 田中 基本的に自家用車のお客様が多いのですが、たとえばスターフライヤーのマイルでタクシーに乗れるような新しいサービスがあれば、もっとタクシー利用者が増えるかもしれません。
-今後、地元企業として、新北九州空港やスターフライヤーを支援するにはどうすれば良いでしょうか。
田中 まず、スターフライヤーですが、今では地元企業からもかなりご支援をいただいています。これは配当への期待よりも、北九州が元気になってほしい、そのためにも新しい航空会社が成功してほしい、という願望の現われだと思います。
大企業とは違い、当社では役員など一部での株主優待券利用による経費削減効果はありません。むしろ、スターフライヤーの利益率を上げ、早く自立してもらうためには、優待割引率を多少下げても構わないと思っているくらいです。
《利便性・流動性を高めるには》
-行政に対して要望はありますか。
田中 建設費用や当社のタクシー事業との相反などの問題はありますが、たとえば小倉駅から空港までモノレールを通すなど、交通インフラ整備は必要だと思います。 やはり空港はアクセスが重要です。とにかく新北九州空港を利用して、東京などから多くの人が訪れてくれれば、街は賑わいます。福岡空港の利用率が高いのは、間違いなく都心に近くて地下鉄が乗り入れて便利だからです。
つづく
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