不動産ミニバブル状況下、福岡都市圏にも数多くの物流倉庫が建設された。物流会社の倉庫もあれば、ファンドが作った会社もある。今回の倉庫建設ラッシュの特徴は、いずれも大型倉庫である点である。
地域的には、(1)博多湾の箱崎埠頭からポートアイランド物流地区、(2)流通センター+福岡インター地区、(3)宇美町井野地区など郊外施設型、(4)(5)鳥栖や筑紫野などに見られる高速インター近郊(福岡インター以外)の物流基地に分かれる。しかし、殆どの新設施設が顧客獲得に難儀している。
(1) | 整備中の博多湾沿いでは、ナカノ商会・日本レップ(2施設)などの倉庫が新設されている。日本レップは別途佐川急便向けに福岡インター近郊に福岡で3番目となる大型物流倉庫の建設に入っている。倉庫用敷地は貯木場跡埋立地や箱崎埠頭からアイランドシティの湾岸沿いにまだ多く残っており、福岡インターにも近く利便性に長けている。 |
(2) | 福岡市近郊の物流施設は、箱崎埠頭から福岡インター周辺に集中しているが、その中間に位置する流通センターの多の津地区が、福岡の物流地区として箱崎埠頭と共に一大拠点となっている。福岡インター周辺は、以前から粕屋農協を中心に大手運送業者向けの物流施設が整備され、日本レップが建設に入ったようにまだ開発が進行している。 |
(3) | 福岡市近郊の宇美町には、井野地区を開発した玄海キャピタルや大和ハウスの大型物流施設がこの間新設されている。福岡・太宰府高速インターの中間に位置し、工場団地も控えており、道路事情次第では、今後とも開発の余地がある。 |
(4) | 鳥栖地区(佐賀県)は九州道と大分道が交差する地区で九州の一大物流拠点として古くから開発されている地区である。以前から物流地区は整備されており、バブル時代には鳥栖の物流地区も地価高騰から開発が難しくなり、大分道の甘木インター地区が開発されたように、各インター近郊に物流施設の分散化が始まった。鳥栖は九州の物流拠点として存在感のある地区である。 |
(5) | 筑紫野インター地区は、CREが広大な土地を確保しており大型物流施設の開発途上にある。 |
その他福岡空港周辺など運送会社中心の物流施設があるが、地価が高く新たな物流施設はつくられていない。不動産ミニバブルの間に新設された大型物流施設は、総じてテナント入居に難儀しているのが実態である。建造前からテナントが決定している施設は、SPCによる開発や不動産ファンドへの売却により開発資金は回収され資金的な問題は発生しないが、器を作りテナント募集している延床面積3万平方メートル以上の施設となると、1スパン当りも大きくなり、簡単にはテナントが埋まらず、開発会社にとって、投資利回りもなく資金の固定化も招いている。
福岡の経済状況も全国と変わらず、不動産ミニバブル崩壊の影響は、福岡市中央区西通りの地価急落に見られるように大である。投資用物件の購入予定ファンドの逃げも聞かれる。賃貸物流倉庫の場合、景気が良く企業投資が拡大時期ならば倉庫ニーズも高いが、冷え込が急な状況下、大型物流倉庫のテナント入居にはかなり時間がかかると思われる。
福岡県はトヨタ・日産・ダイハツ(大分豊前市)など自動車産業の一大拠点となっているが、関連企業の進出は北九州や京筑・筑豊地区に集中しており、そうした倉庫ニーズは福岡都市圏にはない。福岡市近郊の物流倉庫のニーズは商業用が主となっている。
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