「こどもの命」無視する福岡市(上)
こども病院人工島移転 不毛の市政
福岡市によるこども病院の人工島移転は、患者家族、医師、そして多くの市民の反対意見を無視して強行されようとしている。なによりも「こどもの命」を無視し、「人工島の土地」を優先する吉田市長をトップとする福岡市や大多数の市議たちの姿勢は、厳しく糾弾されなければなるまい。
9月定例議会で、こども病院移転のため、3.5ヘクタールに及ぶ人工島の土地を取得する議案は、賛成多数で可決される見通しだが、その前にもう一度今回の「愚行」について整理しておきたい。「こどもの命を危険にさらす」ことが確実視され、将来に禍根を残す今回の決定について、再考を促すためにも・・・。
それは、人工島「検証・検討」の茶番から始まった
吉田宏福岡市長は、平成18年の市長選挙(民主党推薦)で「身の丈にあった市政」「(人工島などの大型開発を含めた)負の連鎖を断ち切る」「市民の知らないところで物事が決まるのはおかしい」「こども病院の人工島移転を白紙にもどして見直す」といった内容の訴えをし続けた。福岡市の有権者は山崎前市政の唐突なオリンピック招致に反発していたこともあり、吉田候補の訴えを(税金による大型開発ストップ)(こども病院人工島移転の見直し)(市民の声を聞く、開かれた市政の実現)と受け取った。当然の見方である。
だからこそ吉田氏は市長に当選したのである。また、税金の無駄使いを阻止し、市民の声を聞き、清潔そうな政党と思われがちな「民主党」が推薦したということも吉田氏当選の大きな要因であったろう。吉田市政の第一の課題は必然的に「人工島事業の見直し」になる。
市長の選挙公約と市政執行の整合性をとるため始まったのが、総務企画局を中心としたチームによって行なわれた、人工島事業「検証・検討」である。8ヶ月という短期間で「検証検討」報告がまとめられるが、同チームは市役所の役人だけで構成され、一般市民はもちろん、民間の有識者さえ参加していない、「市役所と市長のための見直しパフォーマンス」であった。こども病院移転に関して言えば、肝心の医師や患者家族が検証・検討に加わることさえ許されなかった。
「はじめに土地ありき」「人工島事業推進」「こども病院人工島移転」といった市民を裏切る実相の隠蔽は、ここから始まっていたといっても過言ではない。山崎市長時代、市民病院とこども病院の2つの市立病院を「人工島に統合移転させる」という結論を導いた当時の保健福祉局長・ツル川氏が、副市長として検証・検討チームのトップを務めたことも、噴飯ものの人事である。「検証・検討」はまさにスタートから市民を欺くための茶番だったのである。
つづく
【特別取材班】
人工島毒グモ疑惑!
公園の調査を怠り、通報者を「たらいまわし」
福岡市東区の人工島にある「アイランドシティ中央公園」でも見つかった特定外来生物の毒グモ「セアカゴケグモ」について、市は16日に18匹を駆除したと発表した。この件で市は、マスコミの通報があるまで同公園の調査を行なわず、管理会社に「目視」させるだけで済ませていたことが分かった。「人工島の公園で毒グモが見つかることを恐れ、隠蔽しようとしたのではないか」といった疑惑が浮上している。もちろんこども病院人工島移転の市議会審議への悪影響を恐れてであろう。
市は12日までに毒グモの大量発生を確認し、「みなと100年公園」や「香椎浜公園」、「城浜公園」、「人工島コンテナターミナル」といった場所を市職員などで調査、700匹以上を駆除した。しかし、人工島の中央公園に関しては、指定管理者の民間造園業者に「目視を指示した」(市公園管理課)だけで、市で確認調査をしていなかった。意図的な怠慢である。
人工島のコンテナターミナルでも毒グモが発見されているのに、なぜ市は公園の調査をやろうとしなかったのか。
「人工島の公園にいると思わなかった」 ?
市公園管理課は「100年公園に隣接している地域に毒グモがいる可能性が高いと思った。まさかアイランドシティの公園にいるとは思っていなかった」と話す。毒グモが人工島のコンテナターミナルでも発見されているのに、あまりにも緊張感のない対応だ。
また、毒グモを発見したのは一般の大学院生だったという。発見したのは15日午後。16日午前、市に善意で連絡したが、「担当はここではない…」などと区役所とのやり取りで「たらいまわし」にされている。最終的に、テレビ局や新聞社が市に通報し、市はようやく重い腰をあげた。18匹を発見、駆除したのだが、調査を始めたのはその日の午後で、「市の対応が遅い」と関係者は苛立ちを隠さない。
場所によって対応にばらつき
また、市の対応には場所によってばらつきがある。100年公園は毒グモが出たため閉鎖し、城浜公園や香椎浜公園は一時閉鎖したが、人工島の公園は閉鎖していない。「数が少なく、側溝など子どもの手が届くような場所ではない。そう不安がるようなしろものではない」と市公園管理課は楽観視する。無責任としか言いようがない。閉鎖して騒ぎが大きくなればこども病院の審議に影響するというのが本音だろう。
市議会では、アイランドシティ中央公園が隣接する場所に、こども病院を移転するための関連議案が審議されている真っ只中。市は病院の移転先を決めた理由の1つを「公園が近く患者の療養環境として優れている」としている。市民の市への不信感や疑念は、蜘蛛の子を散らすようには拭い去れない。
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