【市長公約ズタズタ】統合移転の決議も可決のデタラメ
福岡市議会は24日、市立こども病院を人工島に移転させるための用地取得議案を、自民、公明、民主・市民クラブ、みらい福岡、福政市民クラブの賛成多数で可決した。共産、社民市政クラブ、ふくおかネットワーク、無所属議員が反対した。また、自民党などは将来人工島に市民病院の統合移転も検討するよう求める決議案を提出、可決した。「人工島事業を見直す」としてきた吉田宏市長の公約は、完全に破棄された。
人工島移転については、反対や見直しを求める提出署名が18万人分を超え、吉田市長が選挙で獲得した得票数を上回る。病院移転がこどもの命に直結する患者家族、医師有志、市民団体らは、何度も市長や議会に見直しを訴えた。それでも市民の声は、市政に届かなかった。
議案に対する反対討論には4人が立った。ひえじま俊和議員(共産)は「博多港開発の救済のため財界、銀行の言いなりになり、子どもの命を犠牲にする吉田市長は市長の資格がない」、野尻旦美議員(ネットワーク)は「数十年先の機能拡張など見通しもないまま、必要のない土地を借金して購入する必要はない」などと訴えた。
池田良子議員(社民)は重症患者の例を出して「病院が遠くなると公共交通機関を使えない患者が通えなくなり、命の危険にかかわる」、高山博光議員(無所属)は「前市長時代に人工島移転を決めた当人の副市長らが検証・検討を行なっており人工島ありきだ。九大六本松跡地では土地代を高く見積もるなど虚偽の数字が踊っている」などと批判した。だが、議会は賛成多数でこどもの命を無視した市長案を可決した。
また、自民、公明、福政市民クラブの3会派は、将来、市民病院を人工島に統合移転するための検討を求める決議案を提出。同案には民主・市民クラブが反対にまわったものの、みらい福岡を含めた4会派の賛成多数で可決した。
「なぜ声が届かないの」 患者家族の無念
わずかな望みに期待し、じっと議論に耳を傾けていた患者家族らからは深いため息がもれた。患者家族代表の佐野寿子さんは「街頭に立っていても、ほとんどの市民は本当に怒っている。『おかしい』と言っている。こどもの命、市の将来がかかっているのに、なぜ私たち市民の声が議会に届かないのか」と悔しさと怒りをにじませた。
議会の可決によって2013年の新病院建設に向けて事業が動き出すことになる。市民に人工島移転の是非を問うため、住民投票条例の直接請求に向けて行なわれている署名活動は、今月28日まで。「署名は続けます。あきらめきれる問題ではない」。佐野さんらは唇をかみながら語った。
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