株主訴訟、佐賀銀行の不明朗な東峰住宅売却
佐賀銀行は、福岡を佐賀に次ぐ一大拠点にすべく精力的に市場開拓を行ない、企業育成でも力を発揮して一定の地位を築き上げた。しかし、これまで佐賀銀行をメインとする企業もかなり多かったものの、福岡銀行・西日本銀行(当時)をそれぞれ核とする銀行合併が繰り返され、市場争奪戦の中で埋没。その後企業育成をも放棄した佐賀銀行は、福岡都市圏市場での地位をなくしているかに見える。佐賀銀行の各ポジションの主役もなかなか見えないが、2007年5月、東峰住宅(株)を穴吹興産(受皿会社は、あなぶき興産九州(株))へ売却した際にも、担当役員が株主に対して支離滅裂な対応をしたことから、現在、佐賀地裁で裁判が進行している。
提訴している株主は、東峰住宅の売却に際し、東峰住宅の負債約37億円をどう処理したのか関係書面=取締役会議事録=の開示を佐賀銀行に要請したが拒否されたため、提訴したものである。
佐賀銀行主導で行われた東峰住宅の売却
東峰住宅産業のメイン銀行である佐賀銀行は、04年1月、不良債権処理の一環で東峰住宅産業を会社分割させ、現業部門の東峰住宅と不動産管理会社である春吉住宅に分離。06年12月、春吉住宅は、負債総額約53億円で特別清算している。
当然会社分割は佐賀銀行主導の下に行なわれ、東峰住宅の社長にも佐賀銀行と関係が深い佐賀共栄銀行OBが当時新たに就任した。佐賀銀行としては会社分割に当たり、東峰住宅の優先株を引き受けて支援していた。
東峰住宅の05年12月期の借入状況は次のとおりである。
佐賀銀行 | 23億3,171万円 |
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佐賀共栄銀行 | 6億0,263万円 |
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親和銀行 | 1億7,692万円 |
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福岡県信用農業(協) | 8,500万円 |
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ORIX | 3億3,642万円 |
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整理回収機構 | 1億5,537万円 |
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計 |
36億8,825万円 |
佐賀銀行は、東峰住宅の穴吹興産への売却に際して、優先株式を回収する必要があることから、06年9月、回収依頼を日興コーディアル証券に対して行ない、100万円のリテイナーフィーとして支払っている。その際日興コーディアル証券には、東峰住宅の購入先の依頼までしており、M&Aの成功報酬として総資産、引受債務等の価値の総合計の3%(最低1,000万円)を支払うアドバイザリー業務委託契約を締結しているのである。
提訴した株主は、穴吹興産へ会社譲渡した額(1億6,000万円)が低く、東峰住宅のデューデリジェンス(資産査定額)に疑問を持ち、また穴吹興産から得た売却代金をどのように各金融機関に配分したのか、佐賀銀行の取得額を情報開示せよと佐賀銀行に迫ったが、拒否されたため提訴しているのである。提訴した株主は、場合によっては担当取締役に対して損害賠償請求を起こすことも視野に入れている。
1958年 |
8月 |
東峰住宅の屋号で創業 |
68年 |
8月 |
東峰住宅産業(株)として法人化 |
2004年 |
1月 |
会社分割、(現業部門)東峰住宅(株)、(不動産管理会社)春吉住宅(株)とした |
06年 |
9月 |
佐賀銀行が日興コーディアル証券と東峰住宅のM&A契約締結 |
06年 |
12月 |
春吉住宅は特別清算開始決定 |
07年 |
5月 |
東峰住宅は穴吹興産(=あなぶき興産九州)に1億6,000万円で売却 |
つづく