2,産科部分の経営収支が大きな赤字となります。
ハイリスク分娩では常に産科医2~3名が対応せざるを得ませんが、計画書によると常勤の産科医は4名ということになっています。出産は24時間体制ですから2日に1回の当直となり非現実的です。最低でも6~8名の産科医が必要ですが、それでも3~4日に1回の当直を余儀なくされます。しかし、昨今の産科医不足で6~8名もの産科医が集まるかどうか疑問です。
日本の産科医不足は深刻で、改善の兆しは全くありません。病院を新築するのは簡単ですが、産科医を育てるのは時間がかかり産科医志望が少なく大変難しい問題です。その理由は過酷な労働条件、医療訴訟が多い、自由な時間がとれない、等のためです。産科医不足と同様に麻酔科医、新生児科医の不足も深刻です。この他も助産師なども15~20名は最低でも必要であり、こちらの確保もたいへん難しい問題です。
市の説明会などでは取り扱う新生児数から年間300例の分娩を予想し、計画書の病床数もそのような数字になっています。しかし、ハイリスク患者の母胎搬送できるものについては最大でも50~100例程度と考えます。経営的には、この他に正常分娩が年間1000例程度なければ赤字は膨らむばかりです。人工島は中心部から偏在し交通アクセスも悪いことから患者さんは少なく、正常分娩を扱わずハイリスク分娩だけを対象とした新病院の周産期医療の収支は膨大な赤字が予測されます。
福岡市の産婦人科医会は、来年予定の産科医療保障制度の導入のため、妊婦健診、分娩費などの慣行料金の大幅な値上げを予定しています。妊婦さんの負担は大きくなり少子化対策にも影響が生じる事が予測されます。福岡市では妊婦健診の無料券が5回発行されていますが、市内の全ての妊婦さんは東京都と同様に14回の無料券を発行をするべきです。市は税金の無駄づかいをなくし、少子化対策・高齢者医療、今後ますます増え続ける発達障害児の福祉・教育など予防医学と健康にもっと目を向けるべきです。
福岡市の調べでは、発達障害児の年次推移は、H1年33人、H5年50人、H10年182人、H15年218人、H19年263人、この18年間で発達障害児は驚異的な速さで増加しています。H19年では、発達障害児とその他の障害児を合わせると年間600~700人、10年後には年間1000人の障害児、つまり福岡市で生まれる子供の12~13人にひとりが障害児と診断されることになります。少子化が進み、このまま財政赤字が膨れると10~20年後の福岡市はとんでもない財政危機に陥っていることが予想されます。
3,将来は正常分娩を扱える施設でなければなりません。
全国的に産科医不足は深刻な問題で、当面は改善策が見いだせないと思われます。福岡市内には2つの医学部がありますが、大学病院でも産科医不足は深刻で他施設に医師を派遣する余裕が無いのが実情です。福岡市立市民病院産婦人科が閉鎖になっていることでもお分かりいただけると思います。出産を扱う開業医も高齢化し、後継者も少なく、遠くない将来に福岡市でも「お産難民」が出てきます。このような状況を踏まえて、妊婦さんが気軽に通える場所に建設すべきです。
つづく