福岡市が多くの市民の反対を無視し、強行しようとしている「こども病院」の人工島移転問題で、同病院の患者家族らが、来月にも予定される衆議院議員総選挙に福岡市内の選挙区(福岡1区、2区、3区)から立候補を予定している候補者すべてに、その賛否を問うことに決めた。
同病院移転にともない、人工島の土地を第3セクター・博多港開発から取得するための議案は、9月定例市議会で22日に委員会採決、24日には本会議での採決が予定されている。
消化試合との批判を浴びる市議会での議論だが、事前の「闇交渉」の情報を裏付けるように「用地面積拡大(最低3ha→3.5ha)、将来の市民病院の人工島移転を担保」といった内容の結末が予想されている。「はじめに人工島ありき」で暴走する吉田市政とふがいない市議会の現状に、批判の声は高まっており、患者家族や市民団体だけでなく、ほとんどの福岡市内の産婦人科医師、小児科医、総合病院の勤務医らも移転反対の意思を表明している。
そうした時期に、青天の霹靂ともいえる福田首相の辞任、そして今秋にも実施されそうな解散総選挙である。これまで、こども病院は市政の問題として公式に意思を聞かれることのなかった国会議員及び立候補予定者たちも、知らぬ顔では通用しない状況となった。
こども病院は、西日本唯一ともいえる専門病院であり、本来「国」が行なうべき広域医療の役目を担っている。その上、病院建設のための起債や都市高速延伸にも「国」が重要な役割を果たすことになる。まさに「国政の課題」なのだ。
「分からない」では許されない
さらに、同病院を利用しなければならない患者家族、これから子どもを産み育てる市民にとって、子どもたちの命が懸かった病院の立地は最重要課題だ。アクセスが悪く「間に合いませんでした」という事故が必至のような場所に、600億もの税金をかけて病院や高速道路を作ることに、良識ある市民が賛成するのか。
福岡市を選挙区とする総選挙立候補予定者として、人工島にこども病院を移転させることについて、「賛成ですか、反対ですか」という市民の問いに、回答しないということは許されない。もちろん、「何も分からないので、これから考える」などといった不勉強・不見識な候補者がいるはずもない。いるとしたら、「立候補の資格さえない」と断ぜざるを得ない。
患者家族だけでなく、今回のこども病院人工島移転の是非を問うアンケートは、多くの市民にとっても候補者を見定める重要なポイントになるだろう。もちろん、こども病院の果たす役割、全国的な位置づけ、専門性などからいっても、これが福岡だけの問題ではないということを付け加えておきたい。
新たに加わった福岡の総選挙の争点に、立候補予定者はどう回答するのか、注目が集まる。
【特別取材班】