政治家に求められる使命の第一は、なんといっても国民の生命・財産を守るということになるだろう。もちろん自らの議席を守ることが第一の使命であってはならない。
利権確保のため、役人と仲良しこよしを続ける政治家も見かけるが、これなどはいずれ手が後ろに回るか、スキャンダルまみれで消えていくことになる。そうしたタイプの政治家ほど、選挙の時は美辞麗句を並べ立てた演説をしたがるものである。
近年は、有権者の学習能力が向上したため、政治家の「命がけで」とか「誠心誠意」という言葉がいかに薄っぺらなものか、ネタばれしてしまったようだ。
さて、福岡の政治家はどうだろう。人工島事業の見直しをはじめ、大半の公約を反故にし、「決めていない」といいながら、正式表明の1年近く前には「国(総務省)」に対し、人工島3.5ヘクタールの土地にこども病院をつくると文書まで提出した吉田市長。市民を騙したということにおいて、既に政治家の資格を失っている。もちろん、こどもの命の重さが分かっているとは思えない。
市議会議員についていえば、一部の議員を除いて、冒頭に記した「国民の生命・財産を守る」という意識が皆無な人間ばかりだと断言しておきたい。
人工島にはコンテナターミナル(既設)、青果市場、大規模商業施設などが整備されるという。噂では済まなくなった「巨大コンベンションセンター」をはじめ、人と車が集中する島になる可能性が高い。公共事業のオンパレードで巨額な資金を投入して、市民の財産である「税金」を食い物にしたうえ、救急搬送に支障をきたすことが確実な場所に病院をつくるという。つまり生死を分かつ救急搬送が「間に合わない場所」に、市長と役人と市議の身勝手でこども病院をつくるのだ。「こどもの命」は守らないと言っているのに等しい。「財産も生命も守ってくれない政治家」が本当に必要なのだろうか。絶対に否である。市民が税金泥棒を雇う必要などさらさらない。
衆議院議員という、まさに選挙区の有権者の声を政治や行政に反映させるため、最大の権限を付与される政治家を選ぶ選挙が間近に迫った。そうした中、こども病院の患者家族らが総選挙立候補予定者に同病院人工島移転の賛否を問うアンケートを実施するという。選挙では必ず「少子化対策」を口にする候補者各氏が、どのような意思表示をするか注目が集まる。
病院の人工島移転に反対する関係者を、市議や役人に引き合わせて「やるべきことはやったから選挙はよろしく」という子供だましは通用しないことも申し上げておきたい。そうした手法が政治をだめにしてきたことを自覚するべきである。そういえば、市議会関係者から漏れてきた「選挙前やから、大先生から『私の顔を立てて、会って話を聞いてやってくれ』と頼まれただけ」との話は、18日の出来事を指しているらしい。何のことを示しているのか、福岡市の読者はもうお分かりだろう。「調整」とは、人と人を合わせることではなく、自らが立ち会って利害関係者間の話をつけることだ。
それはさておき、こども病院患者家族らのアンケートは、「こどもの命を守る」という、国会議員だからこそ第一に問われる自覚の有無を問うものであろう。