「無料で入院できるベッドはもう満杯だ。子どもの命を助けたければ、一泊ホテル並みの料金を支払えば、入院させてあげますよ」。そんなやり取りが市立病院で行なわれるようになるのか――。
福岡市立こども病院の個室の宿泊利用は現在無料だが、人工島に移転後は全ベッドの約3割、個室の半数以上が有料化され、それもホテル並みの料金となることが19日にあった市議会第二委員会で明らかになった。
個室の有料化は、野尻旦美議員(ネットワーク)の質問で明らかになった。市の新病院基本構想案では、新こども病院のベッド数を260床(現在190床)としている。今回明らかになったのは、260床のうち144床が個室になるということだ。
それだけでも関係者は「そんなに個室が必要なのか」と驚いているが、さらにあ然とするのは、個室のうち78床は有償にするということだ。料金は1泊1万2,000円と8,000円の部屋があり、いずれも「ホテル並み」だ。ビジネスホテルだと2泊分に相当する。1万2,000円の個室しか空いていなかった場合は、子どもが1カ月入院すれば入院費だけで36万円になる。
一部議員からは「採算ありきで利用者の立場に立っていない」と批判が噴出。患者家族は「私たちは子どもの命のためだったら借金してでも入院させるだろう。でも、そうした患者の足もとを見て金をむしりとろうとする市のやり方が許せない」と怒っている。
病院スタッフの平均年収135万円ダウンも
人工島移転後のこども病院の職員給与について、医者以外の職員の年収は激減することが明らかとなった。
医師は1,445万円→1,456万円と微増だが、看護師が709万円→606万円、メディカルスタッフが737万円→666万円、事務職員が752万円→617万円と、70万円~135万円ほど年収減となる。
これは、平成18年度決算によるこども病院職員の平均給与と、独法化する新病院での職員給与の比較だ。
こども病院は人工島移転後に独立行政法人化する計画だ。市保健福祉局は独法化のメリットを「自治体直営による制約など足を引っ張っているものを取り払える。効率化やサービス向上につながる」と主張する。しかし、効率化の影で、現場のスタッフにしわ寄せがいくことになる。中山郁美議員は「こうした状況で、医療環境が良く、ここで働きたいと職員が思うのか。独法化がこども病院に適するのか疑念がある」と話した。