《10月14日福祉事業団は理事会で、建築入札業者選定の審議を進める予定》
一枝保育所の園児の保護者や地域住民は、昨年12月に突然、北九州市福祉事業団と市子ども家庭局保育課から同保育所の仙水町への移転を突きつけられた。
現在の場所での建替えや隣接する公園への移転建設も可能なはずなのに、わざわざ距離が離れ、通園に非常に不便な「九州工業大学との換地で得た市有地」への移転を強行しようとする市当局と福祉事業団の説明に納得できず、一枝保育所の保護者や地域住民は市議会へ2回の陳情を行なったが、保健病院委員会での陳情案は不採択となり移転を止めることはできなかった。
保育課は、議会やこれまでの保護者・住民説明会において、「移転先候補地を探したが近隣にはなかったので仙水町の市有地が適切と判断した」と繰り返し説明していた。
一枝保育所の保護者や住民は本当に代替地を探したのか疑問を持ち、9月8日に「一枝保育所移転に関し保育課は一枝校区内で土地を探したが無かったといっています。その証明が明らかになる文書を提出して下さい(探した事実がわかる文書)」という内容で、情報公開請求を行なった。
9月中旬に開示延期の通知が来た後、ようやく10月7日にA3わずか2枚の文書が公開された。
わずか2枚、わずか2行
1枚は平成19年11月の日付が入った「移転計画案の公表(19年12月保護者へ通知予定)」と記された候補地検討のポイントと「一枝保育所を中心とした半径500mおよび600mの範囲が記された地図」の2枚だけだ。
その中で土地を探したという部分は、18年度と19年度に市内部用地課が民地を探したが「今後5~10年は、保育所周辺でまとまった土地の購入は望めない」という箇所と「A社管財担当に確認、土地売却を前提とした社宅廃止の予定なし」というわずか2行の説明だけである。
実際にどれだけ民間の土地を探したのか、役所内部で土地情報提供を求めた依頼文書や民間不動産会社へ委託した証拠・形跡がなく、これでは情報公開請求の意味がない。
たぶん本当に代替地探しをしていれば何らかの文書が残っていたはずだが、仙水町の市有地処分が前提にあったため、民間や他部署に積極的には働きかけていなかったのだろう。
一枝保育所のすぐ近くにある民間の「一枝幼稚園」は、3年後に廃園を決めており、当局がまじめに探していたのであれば候補地として挙がっていたはずだ。
一枝保育所を不便な仙水町へ移転させ、現在の利用者に負担をかけてでも、住環境が良く人気の高い現在の保育所の土地を売却して、市の財政収入を増やすことを優先する市当局の不誠実さが、この情報公開でも明らかだ。
福祉事業団は10月14日、臨時の理事会を開催して、仙水町の建設業者選定のために入札審査を行なう予定だ。
心ある事業団の理事にはもう一度、一枝地区の住民とのこれまでの深い絆を断ち切ってまで移転することが、将来に亘って禍根を残さないか、よく考えて理事会に望んで欲しいと願う。