これまで堅実経営でほとんど問題のない金属回収業界であったが、急激な値下がりから悲鳴を上げる業者が増加している。
これまでブリックス諸国の台頭、特に中国の北京オリンピックに向けての建設ラッシュで、鉄鋼価格が急上昇、鉄スクラップ価格も値上がりを続けてきた。しかし北京オリンピックも終り、昨今は世界を震撼させているサブプライム問題の実体経済への波及により、鉄鋼需要が減じ鉄スクラップ価格が急落している。
回収業者は、これまで大きな設備投資を行ってきた会社も多く、また値上がりを当て込んで鉄スクラップを先行取得した会社も多い。
これまで回収業者は、鋼材の値上がりによる鉄スクラップ値上がりの儲けを見込み、設備投資に走った。銀行もリサイクル業界に対し、積極的に融資をしてきた経緯がある。しかし、鉄スクラップ価格の急落でその設備投資負担が重荷になっているのである。
鉄鋼原料の鉄鉱石が、今年4月から値上がりしたが、鉄鋼価格そのものの値上がりを見込んで大量に鉄スクラップを買い込んだ業者が多い。山の中に隠し持った業者もいるという。
しかし、実体経済にサブプライムローン問題の影響が出はじめた頃より、鉄鋼価格は値下がりトレンドにある。東京製鐵の値下げはその象徴である。特にリーマンショック以来、急激に値が下がっており、次の表でも分かるとおり、スクラップ価格は6月末の相場より半額以下まで落ち、そのため金属スクラップを先行取得した金属回収業者は大きな痛手を負っている。買い込んでいた業者が、鉄スクラップの値下がりに耐えられず、大量に市場に放出しており、値下がりの悪循環に陥っている。
ここで問題は、大きな設備投資をした回収業者である。国内の建設業界を主導したファンドも壊滅状態となっており、建設の鉄骨需要が減少、鉄スクラップも急落、金属回収業者は利益捻出が難しくなっている点である。
※過去、中国需要で鉄鋼の国際価格が値上がった時、新日鉄などのメーカーは、材料価格が安かったことに加え(安い価格での年契約をしていた)、在庫の分が値上がりし、ボロ儲けした。しかし、今回は実体経済が後退局面にあり、一時的な値上がりを除き、急落しているのである。