元日本経団連会長で、トヨタ自動車取締役相談役の奥田碩氏の発言が波紋を呼んでいる。12日に開かれた同氏が座長を務める「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、マスコミの厚生労働省批判に言及。特にテレビに対し「個人的」としながらも「あれだけ厚労省が叩かれるのは、ちょっと異常な話」「正直言ってマスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうか」と発言した。
具体的な番組名などには触れなかったものの「ああゆう番組に出てくるスポンサーは大きな会社じゃない。いわゆる地方の中小とかパチンコとか」と追い討ち。鳴りやまぬ厚労省批判に「切れて」しまったかたち。同氏の発言について、問題点を整理してみたい。
まず、「個人的」としながらも、「スポンサーを降りる」という発言は「トヨタとして」ということになる。(奥田氏が個人でCMを出せるわけがない。)確かにトヨタのコマーシャルを見ない日、見ないチャンネルはない。莫大な広告宣伝費を投じていることは明白である。しかし、そうしないと車は売れない。一方、在京キー局をはじめテレビへの広告収入は、ネットに押され、軒並みダウンしている。そうしたなか、世界のトヨタのCM収入が無くなれば、テレビ局へのダメージは大変なものだろう。だからこそ奥田氏の発言は冗談では済まないのである。金の力でメディアを黙らせるという脅し方は、下劣である。海外市場などの業績悪化をうけて、派遣労働者のカットなどに揺れるトヨタにとって、広告宣伝費はバカにならない負担だろうが、マスコミが悪いからCMをカットするとでもいうのだろうか。
次に、日本経団連の会長を務めた人間の言葉とも思えないのは、「いわゆる地方の中小とか・・」というくだりである。日本の企業の約99.7%が中小企業であるともいわれる。世界のトヨタといえども中小企業なくしては成り立つまい。地方の中小企業蔑視ともとれる奥田氏の発言は経済人としてのレベルの低さを露呈したものであろう。
もともと「厚生労働行政に関する懇談会」は、薬害や年金など、事件続きの厚労省のために設置された有識者会議である。国民の生命、財産を守るという使命を忘れた官庁が責められるのは当然だったはずだ。テレビや新聞が厚労省を責めたてたからからといって、奥田氏が逆切れするのは筋違いだろう。メディアを脅かしてまでも役所の肩を持つ人が、厚労省を良くするとは思えない。こうした人物を同会議の座長にしたことは、明らかな人選ミスである。
奥田碩氏、いったい何様のつもりだろう。