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<恐慌前夜>副島隆彦がみる2009年、日本経済の行方(最終回)
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2009年1月 4日 08:41

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 世界の動きに目を向けてみる。ロシアとイランはついにドルとユーロさえも捨てて、金(きん)を直接、国家準備金(リザーブ)にしつつある。今、世界は「ペーパーマネー(紙切れでしかないお札や株や債券)から実物経済(タンジブル・エコノミー)へ」になりつつある。これは私が5年前の03年に書いた『実物経済の復活』の英文書名でもある。

 米ドルの信認低下を阻止するため、アメリカ政府は金(きん)と原油をニューヨークの先物市場で、金融界とグルになって計画的に暴落させている。米国は目下、必死でゴールドマン・サックスと組んで、アメリカ政府(ニューヨーク連銀)から「金の貸出し」を受けて先物市場(フューチャー・マーケット)で空売りをかけているのである。

 だから直物(じきもの、現物)の金地金(きんじがね、ゴールド・インゴット)の値段と、COMEX(コメックス)の商品先物市場での金の値段に、400ドル(1オンス当たり)もの乖離(かいり)が出ている。極めて奇妙な現象だと言わざるを得ない。日本円にして金1グラムが2,400円の先物値段であるのに対して、現物(直物)では3,300円の値段が、欧米や世界各国では付いている。極めて異常な事態である。必ずここでアービトラージュ(裁定のさや取り取引)の動きが出るだろう。だからいまのうちに金を買っておくべきなのである。米ドルの下落と共に金(きん)はやがて暴騰するだろう。

 アメリカは石油(原油)の値段も意識的に暴落させている。こちらは大産油国でありながら“強力な反米国家”でもあるロシア、ベネズエラ、イランの国家財政を痛めつけるために原油の暴落を仕掛けているのである。原油の需要は実際にも減退していて世界中で原油は余っているから、このあとも1バーレル50ドル台の動きからしばらくは抜け出せないだろう。

 それでもアメリカ帝国(世界覇権国)の没落と衰退はもう誰にも止められない。これは大きな歴史の法則だ。自然の流れと言ってもいい。

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 アメリカ発の金融恐慌がもっとひどくなって状況が今よりも悪化していけば、世界は各国政府が主導する社会主義的な官僚支配、強権的な統制体制に徐々になってゆくだろう。経営危機に陥っている金融部門を助けるために、米国政府はこの先いくらでもドルと米国債(国家の借金証書)を発行する。日本では公的資金投入と言うが、英語でははっきりと「タックス・マネー・インジェクション(税金投入)」と言う。

 民間企業を国が助けることは本来はやってはいけないことだ。倒産(破綻)させるべきなのだ。アメリカ政府は今後、前述した救済資金として40兆ドル(4,000兆円)分のお札と国債を刷り増すだろう。そうやって国内経済を救済する。アメリカにはもうこれしか手がないのだ。裏付けも実体もなしにお札と国債(国家の借金証書)だけを刷り散らし、その場しのぎの救済をする。その結果は火を見るよりも明らかだ。

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 アメリカは、実需・実体の裏づけのないドル紙幣と米国債の刷り過ぎでハイパー・インフレになる。国内では餓えた民衆が暴動を起こし、騒乱状態に陥ってゆくだろう。消費者物価が急騰し、数年後の物価上昇率は年300%などとなるだろう。

 そこで米国内では、デノミネーション(通貨単位の切り下げ、たとえば10ドルを1ドルにする)を実施するだろう。アメリカの対外借金はこれで実質的に大きく減り、10分の1だけを返せば良いことになる。これで中国とサウジアラビアと日本が打撃を受ける。同時に、世界中に流れ出しているドル紙幣はこのデノミネーション(通貨単位の変更)で使えなくなるだろう。

 最後は、米ドルの基軸通貨(きじくつうか、キー・カレンシー)からの脱落と、アメリカの衰退が進行する。アメリカの世界覇権(ワールド・ヘジェモニー)は次第に終わってゆくのである。

 このあと、世界覇権はやがてアメリカから中国にシフトする。日本は沈没するアメリカにこれ以上国民の大切な資金を貢(みつ)がず、アジア諸国や資源大国であるBRICs(ブリックス)との結びつきを強めていくべきだ。日本はこのあとまだ2年はデフレが続く。お札(紙幣)に力がある。物価も下がって賃金も下がる。

 日本は、アメリカの衰退に合わせ、今のうちに自国経済を堅く守る準備をすべきである。

(了)

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副島隆彦(そえじま・たかひこ) → 副島隆彦の学問道場
<プロフィール>1953年5月1日、福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。銀行員、代々木ゼミナール講師を経て、現在は常葉学園大学教授。政治思想、法制度論、経済分析、社会時事評論などの分野で、評論家として活動。日米の政財界、シンクタンクなどに独自の情報源をもち、日本人初の「民間人・国家戦略家」として、日本は国家として独自の国家戦略を持つべきだ、と主張している。副島国家戦略研究所(SNSI)主宰。

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