坂本哲志・総務政務官(自民)の発言が波紋を呼んでいる。5日、総務省の仕事始めにあたっての挨拶で、同日閉鎖された東京・日比谷公園の「年越し派遣村」を引き合いに「本当にまじめに働こうという人たちが集まっているのか」としたうえで「(学生運動のような)『学長出て来い』、そういう戦略のようなものが垣間見える」と語った。
同日「年越し派遣村」が閉鎖され、派遣労働者らが国会までデモ行進、雇用や住居の確保などを求め請願を行なうなどの動きが注目される中での発言だった。
派遣労働者に対しては、正規雇用を求めてもなかなか就業できず、「やむなく」というケースが多いのも事実。しかし、自民党内や財界には「好きで派遣を選んだ」とする批判的な見方も多い。
麻生首相に至っては、昨年12月、パフォーマンスのためハローワークを訪れた折、求職相談に訪れていた若者をつかまえ「なんかありませんかじゃ、なかなか仕事は見つからないよ。目的意識がないと雇う方もその気にならない。何をやりたいかを決めないと就職は難しい」と説教。多くの求職者から反感をかった。
「何でもいいからとにかく職につきたい、しかし、仕事が見つからない」。そうした現実と、派遣労働者を自社の安定装置と考えてきた大企業寄りの自民党にはかなりのズレがある。このズレこそ、有権者が希求する施策と、自民党の打ち出す政策に大きく食い違いが生じる一因でもある。
国民が求めているのは、経済の安定を図ることで不況感を払拭することである。かつての学生運動と、生存自体がかかる労働者達を同一視する神経は理解できない。坂本総務政務官は、デモやプラカードといったもの全てが「学生運動」とダブって見えるのかもしれない。遠い時代のことを引き合いに出していると、政権政党の座も遠い時代のものになってしまうが・・・。
【 頭山 隆 】