20日、福岡市議会は、博多港国際ターミナルの指定管理者をJR九州系の共同企業体(JV)とする議案を賛成多数で可決した。同市議会は、こども病院人工島移転のケースと同じく、不正が疑われる事案を見逃したことになる。これでは存在する意味さえ疑われる。
国際ターミナルの選定をめぐっては、次のような疑惑が浮上している。
1、市港湾局の担当部長と選定委員の1人が、選定対象であるJR九州高速船(株)の取締役で、親会社JR九州の社長・石原進氏を囲む「すすむ会」メンバーであったこと。
2、担当部長がJR九州の専務と「親しい仲」であったこと。
3、担当部長が選定の直前にJR九州側から電話を受けており、「接触禁止規定」に抵触する恐れがあること。
4、選定作業で、「すすむ会」メンバーを含む選定委員2人が、JR系JVに対しては100点満点あるいは96点といった点数をつけながら、対抗馬となった博多港開発を48点にするなど、極端な採点を行っていたこと。
5、博多港開発とJR系JVの提案内容を比較すると、JR系を選定した場合、福岡市は6億5千万円前後の不利益をこうむる恐れがあること。
6、「すすむ会」メンバーの選定委員は、著書の中で石原進JR九州社長と対談を行なっていた、つまり利害関係を有していたということ。
これだけの不適切な事実が指摘されながら、一部の市議以外は議会で質問さえしようとしない。事前に行なわれた市港湾局側による議案についての個別説明を聞いて、口を閉ざしてしまったのである。役所と市議による密室談合と言われても仕方があるまい。議会直前、港湾局の職員が「説明」と称し所管の第3委員会委員をしつこく訪ねていたことがその証左である。事前説明が議会の円滑な進行のためと言うのなら、本会議や委員会は形骸化した見世物ということになってしまう。
不正が疑われる中での不適切な行政の執行は、市民に多大な損失をもたらす可能性が強い。80億円近い税金を投入して作られた国際ターミナルを、民間企業に儲けの道具として放り出すことが許されるはずがない。指定管理者制度は、株式会社などの民間企業に公的施設の管理運営を許している。しかし、場合によってはそれが許されないケースもあるだろう。今回のように、国際ターミナルを使用するビートルなどの運行会社(JR九州高速船)に施設の管理・運営権を委ねれば、他の船会社が同ターミナルを使用する場合、自社(JR系JV)に有利な取り扱いをするのは目に見えている。指定管理者としては、もともと不適格な企業を選定してしまっているのだ。そのうえ、担当部長や選定委員がJR九州とズブズブであるというのなら、選定作業そのものがインチキだったことになる。
市政のチェックは市議会議員の仕事である。しかし、福岡市議会は、人工島事業検証・検討のインチキも見抜けなかった。それが報道され表面化した後、まともに取り組もうとする市議は少数でしかない。特別委員会設置という、あたりまえの声さえかき消されてしまった。何度も同じ過ちを繰り返す議会。これでは市民は浮かばれない。
税金のムダ使いをチェックすべき福岡市議会そのものが、実は最大のムダ使いなのかもしれない。
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