<何故、説明に来ないのか?>
15日の夕方、弊社の情報マンはメインバンクへ取材に行った。窓口の行員は困り果てて言った。「今回の事業停止は寝耳に水で驚いています。当行としては応援するつもりでいるのですが、説明に来なければ手の打ちようがありません」と途方に暮れていた。別の銀行でも異口同音の見解だ。「我が行でも積極的に応援するつもりなのですが、高松社長は先を見越して投げ出したのでしょうか」と首を捻る。
問題の6月5日の決済14憶円の資金手当ての案件である。5月8日に、高松社長は自信を持って「資金の目処はついた」と断言した。まさにその通りに、5月13日にはユニカと話し合いがついた。香椎浜の物件に高松組が担保設定をする協定が結ばれるところまできたので、福銀から融資を受けられる態勢にまで漕ぎつけたのである。13日の夜には、高松社長は美味しい酒が飲んだはずなのだが――。まだ決済日が到来していないのに担保を提供したユニカ側には、13日以降連絡がないそうだ。ユニカの緒方社長や今回のピンチを救済してくれる最大の支援者に連絡がないのもおかしな話である。礼儀正しいと見られてきた高松社長の印象からは意外な一面をのぞかせている。
15日の昼前まで、一部では「福岡銀行が潰した」という情報が流れた。だが、その後の情報の収集を総合すると、それは全くの偽りであった。同行は高松組を真剣に支援する覚悟を決めていた。香椎浜の事業を成功させて、高松組再生を期待していたことは間違いない。銀行も支援の足並みを揃えてくれる。となれば、「累積赤字で苦しい思いをするから、事業停止の道を先手必勝で決断する」というよりも、「みんなに心配をかけた。このどん底から這い上がって恩返しをする」という意気込みを見せていただきたかった。
1億3,000万円という巨額の焦げ付きの打撃を受けた曙設備工業所の野田社長から電話がかかってきた。「高松さんも粘ればまだ事業存続が可能であったはずだ。残念無念だが、我が社は連鎖倒産するわけにはいかない。確かに1億3,000万円の不良債権のパンチが痛いのは確かだ。それでも、今回の資金手当ては借入せずに自己資金で対応する。不良債権防止の積み立ても3,600万円あるが、その資金も封印しておく」と屈することなく元気が良い。
それもそのはずだ。1999年から05年の間に、4億円からの貸し倒れ金が発生した。業界では『貸し倒れ5億円の地獄からの生還』と曙設備工業所・野田社長の戦いぶりを称賛した。08年12月期には30億円の完工事高を誇り、不良債権を完全に償却してきた。事業主魂というのは、野田社長の奮闘ぶりを指すのだ。創業者ではない高松氏にそれを期待するのは無理なことなのか!!
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