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高松組特集

【緊急座談会】高松組破綻を徹底議論 波紋広がる地場建設業界の行方(5)
高松組特集
2009年5月27日 08:00

<建設不動産業界の今後>

 ―ここからは、建設不動産業界の今後にも視野を広げて話を進めていきたいと思います。まず、高松組が事業停止から破産の道を進むとした場合、地場ゼネコンの数が減ることになりますが、仕事を発注する側のデベロッパーも含め、どのような影響が出ると予想されますか。

 石崎 デベロッパーが厳しい状況にあるなか、そういう傾向は既に出ていました。半年くらい前から、仕事を発注してもゼネコンが決まらないという状況が一部で起きています。もちろん業者によっても違いますが、なかにはゼネコンが受注して金融機関につなぎ融資を頼みに行っても、マンション建設の受注にはつなぎ融資をつけないという態度を金融機関からとられ、やむなくゼネコンが降りるケースもあったと聞いています。また、大手デベロッパーの案件なら倒産の危険性が低いから融資が出やすいのかというと、そう単純なものではなく、むしろ大手は支払いが厳しいとの理由でやはり融資をつけてくれません。このように、建設資金まではなかなか金融機関が出さないため、計画自体が難しくなってきています。
 デベロッパーの状態を金融機関が見てくるようになったことも、大きく影響しています。デベロッパーが発注するときには、在庫を減らした状態でないと融資はつきにくくなっています。ゼネコンに対する融資を、その内容の良し悪しとは関係なく、デベロッパーの内容で判断しているケースも出てきているようです。そのため、今までのように土地を仕入れて計画し、すぐに発注というかたちが取れなくなっています。従来のようには計画が立てづらくなっており、自分のところだけでなく、デベロッパーがゼネコンの融資までつけられるだけの下準備を金融機関と行なったうえでないと、計画そのものが成り立たないケースが増えているのです。

 ―分譲マンションだけではなく、賃貸なども含めたマンションで受注を伸ばしてきた地場ゼネコンがたくさんあると思いますが、方向転換なども含めてどう見通しをされていますか。

 緒方 実際、余裕があるところほど、早い段階から方向転換をしていると思います。たとえばサンコービルドは基本的にマンション建設をやりません。商業施設・医療関係などに、早い段階から基盤を作ってきた経緯があります。マンション建設の厳しさや、リスクと見合わないという事情のなかで、早い時期にそういう方向に定めたということだと思います。皆、マンション受注のリスクの高さからは逃げたいのです。しかし借り入れが大きいところほど、デフレ基調のなかでは支払利息負担で借り入れが余計に重くのしかかってきます。当然、価格競争力も落ちます。結局、マンションをやめて他の新しい分野で受注を伸ばしたいと思っても、競争に勝てずにズルズルと続けてしまう状況に陥っていると思います。ただ、ここまで市況が低迷してしまうと、ほぼ限界かなとも感じます。

 石崎 業態チェンジをしているところは結構増えています。分譲マンションの施工を中心にやっていたところでも、同じRCを建てるにしても分譲デベロッパーからではなく、個人オーナーから受注するというかたちも、一種の業態チェンジと言えるのではないでしょうか。個人オーナーであれば金融機関も結構融資を出してくれるので、個人オーナーからの直接受注にシフトする業者が増えてきています。いまだに分譲マンションの建設に特化している会社は、かなり少なくなってきています。その引き金になったのはディックスクロキの破綻です。ちょうどあの頃を境にして、分譲マンションを主体に受注していた業者がシフトチェンジしてきています。
 逆に、それすらできない業者はかなり厳しくなると思います。先ほども話しましたが、デベロッパー自体もなかなか発注できない状況です。夏頃から発注が増える気配はあるのですが、デベロッパーにはゼネコン選びだけでなく、ゼネコンに金融機関から融資をつける調整までやらなければいけなくなっていますので、選定基準は厳しくなっています。自ずと分譲系のマンションを受注しようとしているゼネコンは少なくなりますし、厳しくなると思います。

 鹿島 受注構成を短期間で変えるには基礎となる技術力が欠かせませんし、それがなければそれなりの準備期間が必要となります。若築建設も、インベストの破綻当時ぐらいからデベロッパーから撤退し、別の方向に受注を広げましたが、それも施工能力を含めた力があればこそだったと思います。これからの方向転換を今から考えていくとなると厳しいものがあると思いますが、物は建ち続けていきますし、今までも成功事例はありますので、方向転換していく企業はいくつも出てくると思います。

 ―先ほどありましたように、マンション工事での粗利は5%程度しかありません。しかも、ここ最近はデベロッパーの破綻が続いています。利益は取れないうえ、回収もできないという事態になるのであれば、マンション工事の請負とは距離を置かざるを得ません。他方で、一定レベルの完工高を確保していく必要もあります。いっそのこと、自社そのものがマンション事業の事業母体になればいいと思うのですが、無理な話でしょうか。

 石崎 一部のゼネコンにはそういう話もしています。ゼネコンが事業主、要するにデベロッパーに近い存在になることが生き残りの策だと考えているからです。もちろん販売力は持っていないので、販売はある程度デベロッパーに任せるのですが、そのために計画の段階から話に乗っかり、利益の取り分まで含めて事前に協議に加わるのです。逆もあります。手がけた物件が最終的に売れなかったときには、自分で引き取って処分していく腹づもりが必要となるのです。そこまで腹をくくらないと、受注できなくなる状況が遠くない未来にやってくると思います。それで利益は確保できるし、資金力があるところはそれなりの単価でもとれるはずなので、生き残れる可能性はグンと増すはずです。

 ―縮小の業態チェンジについてはどうですか。地場ゼネコンのなかでも、不動産やアパートの管理部門だけを残してゼネコン部門をM&Aで売却した会社が散見されます。

 石崎 ゼネコンの数がさらに減っていく流れ自体は、動かしようがありません。そのなかで、強みや方向性などをサボらず磨いた企業しか生き残れないようになってくるということです。中途半端というと言い方は悪いですが、RCを含めて何でも請けるし、借り入れもそこそこあるような企業が淘汰されていくのでは、と思います。借入過多のゼネコンは倒産一歩手前、売上10億円足らずの小規模なところは、家賃収入の不動産・アパート経営に移行してゼネコンをやめていく、などの事例が加速化するように感じます。
 ゼネコン各社が加盟する福岡建設協力会には、ピーク時57社ほど名を連ねていたと思いますが、最近では20社を割るような感じになっています。

 ―そのような業界団体の存在意義も問われる時期なのですね。大きなうねりのなかで、建設請負の流れはどうなっていくと思いますか。

 緒方 そういう意味でも、高松組という建設協力会会長の会社が倒産したインパクトは大きいと思います。規模は違えど、細る建設業界のなかで非常に苦しい局面に立たされている企業はたくさんあります。そうしたところの気持ちまで萎えさせてしまうことを誘発する可能性はあると思います。実際、業界団体が形骸化してしまっている部分も現実としてあり、地区によっては解散したところもあります。業界団体というだけで談合組織や利権がらみとして見られてしまうなど、団体に加盟しておくメリットがないということで、そういう協力会のような業界団体は、流れとしては解体の方向だと思います。

  有澤建設、北洋建設などは独立独歩。組合から飛び出て健闘していますね。建設協力会のなかでは、百田工務店などの健闘も光ります。

 緒方 サンコービルドも三井鉱山から独立したとき、福岡のゼネコンとしてどこかの業界団体に所属するか考えていた時期があったそうですが、結局入りませんでした。そういうところのほうが自分たちで切り開いていくという気概があるのかもしれません。

(つづく)

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