財務管理の甘さ
しかし、リーマン・ショックに始まった金融恐慌などで景気が急速に後退し、同社が販売先の中心としていた富裕層の消費意欲が減退。主力の高級外車販売は低迷し、昨年末ごろから資金繰りが悪化していた。
今年4月以降は2度のバンクミーティングを行ない、またスポンサーとDIPファイナンス先を確保するといった再建計画を提示していたが、結局は金融機関の同意を得られなかった。実質の債務超過額は44億円余りに達しており、組織としての財務管理の甘さも露呈した。
カーチューニングに使用するホイールやエアロパーツを卸していた業者は、次のように語る。
「同社には昨年12月末時点で50数万円分の商品を引き渡していた。翌年の4月中に完済されたが、12月末に入金できなかった理由を『経理ミス』と伝えてきた。1月になると藤堂社長と連絡がとれなくなった。それまで、こちらからは年に数回の電話だったが、必ず折り返しがあったにも関わらず」。
その後は櫛橋取締役が代わりに対応することになったようだが、支払いは少しずつ引き延ばされたという。
「櫛橋氏からは『会社の資金繰りが厳しいから、とりあえず藤堂個人の金をレクリス名義で振り込む』と言われた。初めはウソかと思ったが、4月半ばにはきちんと振り込まれた。人づてに聞いた話だが、融資を受けていた各銀行およびリース会社がお互いに情報を開示した際、あまりにも各社間で情報が違ったという。通常の資金繰り悪化と違うのでは」という見方をする。
無論、急激な販売不振に陥り、運転資金の調達もままならなくなっていたことは想像に難くない。ただ、塗装材を入れていた業者が、「たしかに昨年暮れの社員へのボーナスがカットされるなど、資金繰りは厳しかったのだろう。だが、車を販売してもきちんと入金がなされないケースもあったと経理の人間から聞いたことがある」とも語るように、支払いで顧客との間で問題があった、という話も聞かれた。
【大根田康介】
【本稿は6月25日号「IB」に掲載分を一部加筆修正したもの】