多額の融資は担保取らず
今回、レクリスに対して最も融資していたのは佐賀銀行で、同行の発表によると債権は約18億2,800万円(裁判提出資料では約9億5,000万円)。当然、建物や車を担保に取っているだろうと思いきや、どうもそうではなかったようだ。
倒産直後に現場へ向かった際、偶然にもリース会社の担当者が来ていた。「うちは1億円が焦げ付き、今日は前の担当者に代わって私が車の査定に来た」と言い残し、そそくさとショールームの高級車3台と大型トラック1台の査定に入っていた。
その一方で、建物入り口を見てみると、弁護士からの通達とは別に、税務署の貼り紙が掲示されていた。それによると、建物内にあるレーシングカーなど3台を差し押さえていた。建物も不動産登記から福岡市より差し押さえられたことが分かる。
となると、佐賀銀行はいったい何を担保に取っていたのか。同行の担当者に直接質問をぶつけてみた。
「我々は車を担保に取っているつもりだった。ただ、車という動産を担保にする場合、車検証の名義人が当行になっている必要がある。しかし、実際はリース会社の名義だったようだ。つまり、ショールームの高級車をリース会社の担保としてお金を借り、それを運転資金や商品調達資金に充てていたと思われる。リース会社は10数社が絡んでいるとも聞いている」という。「動産に対する認識が甘かった」と同行担当者は悔やむ。
車検証をきちんと検査して名義確認していれば防げていた事態だっただけに、非常に脇が甘かったと言えよう。
ただ、飲食店経営については「一部報道で飲食に対するノウハウに弱いとあったが、それはその通り。だからこそ、我々は当初から反対だった。というより、何の相談もなく突然開店したため、金銭的にはノータッチだったというのが本当のところだ」と弁明する。この話が真実だとすれば、同社は金融機関との折り合いがついていなかったということになる。
倒産する以前から一部の取引業者間で、「数十億円の車の仕入資金が、実際には買い付けに使われていないのでは」とささやかれていた。いずれにしろ、今回の倒産劇は「粉飾」の一言では済まされないほど会社の資金の流れが不明瞭で、経営側も金融機関側もこれを明瞭にする作業を徹底すべきだった。
【大根田康介】
【本稿は6月25日号「IB」に掲載分を一部加筆修正したもの】