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大和と破談した 三井住友・奥体制の蹉跌(上)
ビジネス最前線
2009年9月14日 13:12

 今年の「ワースト・ディール・オブ・ザ・イヤー(最悪の取引)」の受賞者は、三井住友で決まりである。5,250億円もはたいて、日興コーディアル証券と、日興シティグループ証券の主要事業を手中に収めたのに、資本提携関係を結んでいた大和証券グループとの関係が解消してしまったからである。無理なディールに突っ走った三井住友銀行の奥正之頭取の能力に、疑問符が点灯している。

<三井住友の「焦り」>
 奥頭取の口から出た言葉は、驚くべき内容だった。9月10日夕、東京・大手町の同行支店で行なわれた「破談発表」の記者会見での発言である。奥頭取は、破談に至った経緯をこう説明した。
 「米シティグループが(傘下の)日興コーディアル証券を売却するというので入札に参加し、先方と守秘義務契約を結びました。そうしたら向こうが、法人向け事業(日興シティグループ証券)も一緒に売却するという話に変わりました。守秘義務契約上、そうした内容を大和側と議論することは許されていませんでした」
 この発言を信用するならば、大和は、三井住友の日興買収(とりわけ、法人部門の日興シティ)計画を聞かされていなかった、ということになる。大和の幹部もそれを裏付けるように「日興を買収するというのは知ったのは、新聞報道によってでした。あまりにもこちらを見下したやり方です」と打ち明ける。三井住友は、手中に収めた日興と従来からの提携先であった大和を統合し、「野村証券を追う」(奥頭取)考えでいたが、軽くあしらわれた大和側をさらに怒らせるようなことが起きた。
 「住友側の交渉担当幹部があまりにも上から目線の物言いで、非常に傲慢だったんです」(大和幹部)。三井住友は、「大和は踏みつけてもついてくる」と踏んだようだが、さにあらず。急いてはことを仕損じる、というが、まさにそれを地でいったような展開となったのである。

<劣勢挽回への動き>
 複雑な関係を少々紐解くことが必要だろう。証券会社には、株や投資信託を個人客に売買するリテール(小売)部門と、企業の株や社債の発行の手伝いをするホールセール(卸)部門がある。三井住友は旧住銀時代の1999年、かねてより親密先だった旧大和証券と資本業務提携を結び、大和のホールセール部門を切り離して大和証券SMBCを設立、約1,500億円を出資した。当時の大和は、4大証券会社の総会屋利益供与事件に直撃された上、同業の山一證券が経営破綻し、信用不安にさいなまれていた時期だった。流動性危機にさらされ、ニューマネーが欲しかった大和がすがりついたのが旧住銀だったのだ。このディールをまとめあげて名を挙げたのが、日本郵政に転じた西川善文前頭取である。
 こうして大和側60%、三井住友が40%出資する大和SMBCができた。M&Aブームの波に乗って、2000年以降業容が拡大。M&A界では「住友別働隊」と言われ、三井住友と大和SMBCが組んだ取引が多かった。

(つづく)

【神鳥 巽】

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