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東京レポート

創業家の排除を狙った 吉本興業の非上場化(上)
東京レポート
2009年9月16日 09:03

 お笑いの殿堂、吉本興業(大崎洋社長)は9月14日、TOB(株式の公開買い付け)による非上場化に踏み切った。世襲に執念を燃やす創業家一族を排除するのが目的だ。TOBを行なうファンドは、クオンタム・エンターテインメント(出井伸之社長=元ソニー会長)。ファンドには、在京民放キー局5社のほか電通、ソフトバンクなどが出資。買い付け代金は506億円。TOBが成立後、ファンドは吉本を吸収合併し「吉本興業」の社名は存続。吉本は非同族会社に生まれ変わる。

<実態は「林商店」>
 吉本興業の経営の混乱は、創業者一族の林家との関係が一体化していたこと。吉本興業の筆頭株主(9.8%保有)は大成土地。吉本家と林家のファミリー企業であると同時に、吉本興業の子会社(24.2%保有)という関係である。吉本興業東京本部が入居しているビルを所有しており、これまで林家が取締役に就くのが慣例といった具合に入り組んでいる。上場企業の実態は「林商店」そのものだった。
 TOB価格は1株1,350円。大成土地が保有する吉本株は368万株、TOBに応じ49億6,800万円の現金を手にする。大成土地はクオンタム社に10.5%(25億2,000万円)出資して引き続き株主になるが、大手民放が過半数を握るため、林家の影響力を排除できる。TOB価格と出資金の差額24億4,800万円が手切れ金になるわけだ。
 クオンタム社が吉本株を買い付ける代金506億円は、出資金240億円のほか、三井住友銀行などの金融機関から300億円を借り入れる。クオンタム社は吉本を吸収合併するので、300億円は吉本興業の借金。林家を排除する代償に、300億円の借金を抱えた。

<女興行師・吉本せい>
 「あんさん、そないに芸事好きでっか...それやったら、いっそのこと、毎日芸人さんと一緒に居て商売になる寄席しはったらどうだす」
 女興行師・吉本せいをモデルにした山崎豊子の小説『花のれん』は、主人公にこう語らせている。せいが嫁いだ荒物問屋の跡取り吉兵衛は、剣舞などの芸事に入れ込み、店を傾けた。寄席を商売にしたら仕事に精出すかもしれない、とせいは思った。「お笑い王国」吉本興業は、せいが夫の吉兵衛にもちかけて誕生した。
 吉本せいは、極道と共存共栄する興行界で、一癖も二癖もある男たちと渡り合い、女性事業家として類まれな成功を収めた。木戸銭(入場料)を普通の寄席の3分の1にして、安さを売り物にして客を呼び込み、いち早く寄席のチェーン化に乗り出した。安い料金にするには多くの小屋をもつべきだ、と考えたからだ。大阪のシンボル通天閣を買収し、「女今太閤」と評されたため、後世に「男まさりの女傑」というイメージばかりがひとり歩きした。
 しかし、家庭的には不運な人だった。
道楽者の夫、吉本吉兵衛を若くして亡くし、溺愛していた息子の穎右(えいすけ)はそぐわぬ恋をする。相手は、「ブギの女王」として一世を風靡した歌手の笠置シズ子。身ごもっても、せいは結婚を頑として認めなかった。穎右は許されぬまま24歳の若さで死去。その落胆から、吉本せいは1950年に60年の生涯を閉じた。

吉本・林家系譜
(つづく)

【日下 淳】

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