九州・山口に本社があり、中央の大手ドラッグストアと互角に勝負できる企業は、今のところ九州・山口で第1位、全国6位の「コスモス薬品」(福岡市)1社しかない。
第2位は「ドラッグストアモリ」の名で展開している「ナチュラル」(福岡県朝倉市)である。ナチュラルは福岡県内に57店舗を展開しているが、九州・沖縄全県に店舗展開している。
JR九州の子会社となった第3位の「ドラッグイレブン」(福岡県大野城市)は、ココカラファインとの業務提携を発表し、再建途上にある。第四位はナスダックに上場している「ミドリ薬品」(鹿児島市)であるが、マツモトキヨシのグループに入っている。第五位の「大賀薬局」(福岡市)は、隣接する佐賀県に2店舗、熊本県に1店舗あるが、残り61店舗はドミナント経営に徹して福岡市域を中心に店舗展開している。
第6位の「岩崎宏健堂」(山口県周南市)も広島市域に6店舗あるが、残り50店舗は大賀薬局同様、山口県内でのドミナント経営に徹している。
第7位の「サンキュードラッグ」(北九州市)は、北九州市内に28店舗、隣接する中間市・遠賀郡に2店舗、下関市に6店舗の合計36店舗(調剤薬局併設25店舗)と調剤薬局26店舗を有し、信用金庫並みに徹底したドミナント経営に徹している。
表から見ると九州・山口のドラッグストア業界の現状は、売上高及び店舗数からしても業界同士の生き残りを賭けた地域戦争が読み取れる。(1)「大手ドラッグストアとして生き残りをかけて中央に進出する」、(2)「大手ドラッグストアの系列に入る」、(3)「地域ドミナントに徹して、面での店舗展開でたくましく生きる」、(4)「コンビニへの医薬品卸業者となる」、(5)「多店舗経営に失敗して同業他社に吸収されるか破綻する」、の厳しい戦いの序章に過ぎないのかもしれない。
かつて免許制であった酒類販売が規制緩和されてコンビニでも販売できるようになったのと同様に、医薬品もいずれ規制緩和されて第二類医薬品~第一類医薬品までをコンビニで販売できるという糸口を掴んだことになる。医薬品が規制緩和されるまでに体制を築きたいドラッグストア業界と、医薬品の規制緩和を見越してノウハウを取得しておきたいコンビニ業界との、双方の思惑を秘めた戦いでもある。ドラッグ業界大手とコンビニ業界大手の提携の波紋は、地方でのドラッグストア同士の戦いとともに、対地元スーパー、対コンビニとの三つ巴の戦いでもある。
このゲリラ戦を生き抜いて、5年後に名前を残すことができる企業がいったい何社あるのかを予想するのは難しいが、まさに各企業のトップの経営手腕が問われている。消費者にとっても、安易に買える「クスリ」は、すなわち「リスク」を買うことの裏返しであり、自己責任が求められてくるだろう。
【北山 譲】
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