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「飛行機が飛ばない空港」ができるわけ(上)
ビジネス最前線
2009年10月13日 16:37

 東京の通勤圏でもある茨城県に来年春、空港が開港する。ところが、いまのところ国内線の就航の見通しはまったくない。静岡空港といい茨城空港といい、飛行機がほとんど離発着しない空港が何故相次いでできあがるのか。

<国内就航予定のない茨城空港>
 茨城空港は、航空自衛隊百利基地と「軍民」共用の空港だ。既存施設を使うため、「総投資額が安く抑えられた」というのが茨城県の触れ込みで、全体の総事業費は同規模の空港の半分程度の220億円という。全長2,700メートルの滑走路を有し、北海道、関西、福岡、那覇などとつなぎ、年間81万人の利用を見込んでいた。
 ところが、来年3月の開港まで半年を切った10月1日現在、国内線の就航予定の路線はない。茨城県はJAL、ANA両社に就航を再三再四要望してきたが、「話し合いのテーブルにつくことさえ拒否されている」(空港対策課)という状態だ。代わって、茨城県は方針を大幅に転換し、海外の格安航空会社の招致に軸足を移した。成田に降りたいものの、枠がとれない海外の新興の格安航空会社ならば、成田の代わりに茨城空港を使ってくれるに違いない、と踏んだのだ。マレーシアのエアアジア航空を本命に交渉を重ねてきたが、エアアジア側は色よい返事を与えない。唯一の成果は、韓国のアシアナ航空がソウルと1日1往復する方針を表明してくれたことだ。県の担当者は「これで、開港時に就航路線がゼロという最悪の事態は回避できた」とホッと胸をなでおろす。

<特別会計=航空官僚の権力の源泉>
 とはいえ、1日1往復では、最大限見積もっても年間利用者は7万7,000人程度。これは連日100%乗客が乗ったと仮定した数字なので、搭乗率が70%だと5万4,000人程度になる。国土交通省が1998年にはじき出した年間81万人の利用客には到底およばない。茨城県は、海外ではまったく知られていない「イバラキ」という地名ではアピールできないと見て、海外向けに「茨城東京空港」と、わざわざ東京を冠した名称にして知名度向上を図っているが、詐称もいいところだ。当然、空港経営も不安視され、昨年6月にあった空港ターミナルビルの入札では、売店や免税店の応札がゼロだった。
 こうした無駄な空港が続々できあがるのは、空港整備の特別会計(社会資本整備事業特別会計・空港整備勘定)があるからだ。国交省は、羽田や伊丹、福岡など国内主要空港に発着する航空会社から着陸料(09年度で829億円)や航行援助施設利用料(同1,255億円)を徴収している。これに、航空各社に果たす航空燃料税(同781億円)などを加えて、年間5,000億円程度の特別会計を持っている。この5,000億円の資金をどこに分配するかが、国交省航空局に巣食う航空官僚の権力の源泉だった。航空官僚が運輸族など自民党の議員と結託し、彼らの選挙区である地方に続々空港を建設していったのである。
 こうしてできた空港は、いまや97カ所。これが茨城などの開港で、2年後には99カ所になる。英国、ドイツに次いで、空港数だけは世界3位という世界トップクラスだ。国土面積比では航空先進国の米国の1万平方キロメートルあたり2.0を抜いて、日本は2.6にもなる。

(つづく)

【神鳥 巽】

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