決済印も旅行者本人の印もない「旅行命令(依頼)書」が飛び出した。08年8月、香港でアジア文化賞・受賞者発表の現地記者会見を行うため、福岡市総務企画局国際部アジア文化賞担当課職員らが香港に出向いた時のものだ。既に支出がなされており、この状態では「カラ出張」との疑いを否定できない。
担当課に説明を求めたところ、次のような回答が返ってきた。
○旅行命令が出された当該職員が中国・広州市に派遣されていた市職員であったため、口頭で命令を伝えた。口頭での命令は規程違反ではない。
○後日、当該職員に対し旅行命令書を示し印鑑をもらうことになっていたが、それを怠った。
○当該職員の直属の上司が命令権者だったが、アジア文化賞担当とは別の課の課長だったため、決済印をもらい忘れていた。
到底納得できる回答内容ではない。この説明にはふたつの点で問題が生じるからだ。
第一に、口頭での命令は規程違反ではないとしても、後日、当該職員に命令書を提示し印鑑をもらう段階で、命令権者の印鑑が押されていなければならない。しかし、問題の文書には命令権者の印鑑がない。つまり、公費支出の根拠となった命令書が不存在だったということに他ならない。明らかな規程違反であり、市側説明には整合性がない。
次に、なぜ今ごろになって問題の文書が出てきたのかということだ。今回、アジア文化賞担当課は、当該職員の復命があるにもかかわらず命令書がないのはおかしいという記者の指摘を受け、幻となっていた命令書を提示してきた。しかも不完全な公文書である。こんなものが公式に保管されてきた「公文書」とは思えない。ふと記者の頭をよぎるのは、別の海外出張で復命書がひとり分足りないとの指摘を受けた同課が、復命書の原本を改ざんしたケースだ(※参照:【独走スクープ】福岡市、公文書を「改ざん」 / 文書改ざん問題 「虚偽公文書作成」の疑い(福岡市)【独走スクープ】)。一体いつ作成された文書なのだろう。
13日、アジア文化賞担当課に再度説明を求めた。
【市政取材班】
(つづく)
※記事へのご意見はこちら