ファミリーマートの上田準二社長(62)が動いた。コンビニエンスストア3位のファミリーマートは11月13日、同7位のエーエム・ピー・エム(am/pm、本多利範社長)を12月24日付けで買収して完全子会社化すると発表した。懸案だった店舗名も「ファミリーマート」に一本化することで合意したとして、来年春の合併を目指す。
<伊藤忠とファミマの思惑の違い>
ファミマがam/pmを買収できるのか疑問をもたれていた。というのも、am/pmをめぐっては、今年2月にコンビニ2位のローソンが145億円で買収することでいったん基本合意したものの、5月に破談していたからだ。am/pmの商標権を保有する米エーエム・ピーエム・インターナショナル社が、am/pmの店名を残すことを主張したことが原因だ。
ローソンの撤を踏まないために、買収に手を上げたファミマは、どんな手を打つか。買収の成否は、その一点にかかっていた。
当初の交渉は、米エーエム・ピーエム社との契約に同業他社に売却できないという条項があり、ファミマ筆頭株主の伊藤忠商事が交渉を主導した。
伊藤忠が進めているam/pmの買収交渉に、公然と異議を唱えたのがファミマの上田社長。読売新聞(10月15日付)のインタビューで、「一つのブランドにしなければ厳しい」と述べ、am/pmの「ファミリーマート」への転換が買収の条件になるとの考えを示した。ファミマのブランドに統一しなければ、am/pmを買収する意味はないと伊藤忠に釘を刺したわけだ。
さらに、上田社長は「先進国では、あらゆる業種で、『ナンバー1と対抗勢力』という構図になっている」と指摘し、首位のセブン-イレブン・ジャパンに対抗するため、「将来的には(2位の)ローソン・ファミマ連合もあり得る」と踏み込んだ発言をした。
上田発言に、コンビニ業界は騒然となった。伊藤忠のコンビニ戦略に、傘下のファミマが真っ向から異議を申し立てたからである。
はからずも伊藤忠とファミマの思惑の違いが浮かび上がった。伊藤忠は商品を供給するチェーン網を増やすのが目的だから、2つのブランドのコンビニを持つことにこだわりはないが、ファミマにとってはブランドを一本化しなければ、買収した意味はない。
そのため、伊藤忠が、米エーエム・ピーエム社の買収に打って出るとの観測が浮上した。商標権問題をクリアするために、ライセンスを保有する米国の本体ごとM&Aをしようというわけだ。これにより、am/pmを買収しても、ファミリーマートのブランドに店名を変更することができるという計算だ。
<実質120億円で買収>
上田社長の異議申し立てがきいたのか、伊藤忠に代わって、ブランド一本化を唱えるファミマが交渉の表舞台に立った。am/pmの業績悪化で、親会社のレックス・ホールディングスを運営する投資ファンドのアドバンテッジパートナーズが売却を急いだことが、ファミマに幸いした。
ファミマは、am/pmの親会社のレックスから全株式を1円で取得し、レックスからの貸付債権120億円を引き受けた。レックス側は145億円、ファミマは100億円を主張していたが、その間をとって120億円でまとまった。
懸案であった店舗名をファミリーマートに変更することについては、「商標権をもつ米エーエム・ピーエムの了承を得ている」として、店舗名は「ファミリーマート」に一本化する。
上田氏は伊藤忠商事出身の商社マン。度胸の良さに定評がある。上田氏が関西の“食肉の帝王”のもとに挨拶に行った際のこと。
「まあ、履いてきた靴を持って上がれや。さあ、さあ、ビールを一杯」と言われ、自分の短靴になみなみと注がれたビールを飲み干し、10人前ほどの寿司を食べ切るまで帰してもらえなかったという逸話がある。
こうした類の修羅場を何度も経験している上田氏は、am/pmの買収についても、親会社に異議を申し立て、自らの主張を貫いた。
【日下 淳】
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