あのユニクロの勢いが止まらない。とうとう大記録を達成した。カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(山口市)の株価が上場以来高値を更新し、時価総額(株価×発行株式数)が、国内小売り最大手のセブン&アイ・ホールディングスを超えた。ユニクロが、小売株の首位に立った。
<時価総額が小売業首位へ>
11月11日の東京株式市場。この日で4連騰となったファーストリテイリング(以下ファーストRと略)株は、前日比230円高の1万6,920円で、時価総額は1兆7,948億円。一方、セブン&アイ株は14円安の1,948円で、時価総額は1兆7,658億円。ファーストRが年初来30%上昇したのに対し、セブン&アイは36%下落した対照的な値動きが、時価総額の逆転をもたらした。
これは、小売業の歴史に大きな節目となる画期的な出来事である。
小売り銘柄の時価総額は、1982年にイトーヨーカ堂が三越を逆転。トップの座を百貨店からスーパーを奪った。91年にはセブン-イレブン・ジャパンが親会社のイトーヨーカ堂を上回り、スーパーに代わってコンビニがトップの座についた。
今回、18年ぶりに首位が入れ替わった。セブン-イレブンとイトーヨーカ堂を傘下にもつセブン&アイから、ユニクロのファーストRへ。トップの座をスーパー・コンビニ・百貨店の総合小売から、専門店が奪った。時価総額は、小売業の業態の栄枯盛衰を映し出している。
<業態の栄枯盛衰>
近代小売業の元年は1905(明治38)年。三越呉服店(現・三越)の「デパートメント・ストア宣言」が嚆矢。経営を託された、福岡は久留米藩士出身の日比翁助は、それまでの座売り方式を陳列販売方式に変え、経理を大福帳から複式簿記に変更した。晴れ着の流行の導入、「今日は帝劇、明日は三越」のキャッチフレーズにみられる巧みな広告や販売促進策によって、顧客を呼び込むことに成功。日比は近代百貨店の祖となった。
百貨店は全国に拡大。近代小売業の第1期は、百貨店の全盛時代である。
第2期は60年代から。セルフサービス販売という革新的販売方法を取り入れたスーパーマーケットが出現。中内功氏のダイエーの売上高は72年に三越を上回り、スーパーの全盛期を迎える。82年、伊藤雅俊氏のイトーヨーカ堂の時価総額が、三越を追い抜いた。スーパーは、名実ともに小売業の王者となった。
第3期は90年代から。コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンター、家電量販店、カジュアル衣料などのあらたな業態が開花した。小売業の群雄割拠の時代だ。91年、鈴木敏文氏が生みの親であるセブン-イレブン・ジャパンの時価総額が、親会社のイトーヨーカ堂を逆転。コンビニの全盛期を迎えた。百貨店、総合スーパーなど「総合」を掲げる業態が地盤低下を速める一方で、専門店が台頭してきたのが大きな特徴である。
09年。柳井正氏(60)率いる専門店のファーストRの時価総額が、コンビニのセブン-イレブン、スーパーのイトーヨーカ堂、百貨店のそごう・西武を擁するセブン&アイを上回った。だからこそ、小売業の歴史にエポックを画す、大きな意味をもつのである。
【日下 淳】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら