迷走が続く日本航空(JAL)の再建策だが、ここに来て政府内に急速に法的整理策が台頭している。「再生のプロ」たちを起用したJAL再生タスクフォースが尻すぼみとなり、支援があてにさた企業再生支援機構にとっても「手に余る」案件だ。法的整理によって、優雅な年金債務の減額や労働条件の変更などがしやすい面もある。
<債務超過7,800億円、法的整理へ>
11月に入って、JAL法的整理策が急浮上している。前原誠司国交相は18日の衆院国土交通委員会で「法的整理をしないと言ったことはまったくない」と述べ、法的整理を選択肢に入れていることを明らかにした。これは2カ月以上におよぶJAL再建策論議のなかで、事実上の路線修正を狙ったものとみられる。
前原氏は就任直後の9月17日の記者会見で「破綻という事態があってはならない」と発言、さらに同24日のぶら下がり会見でも「(法的整理は)現時点では一切考えておりません」と法的整理策を自ら封印してきた。すでにこの時点で、翌25日に正式発足するJAL再生タスクフォースの高木新二郎氏や冨山和彦氏と前原氏は接触しており、1カ月後の10月29日にまとめられたタスクフォースの再生計画書が法的整理を排除した内容である点を考えると、彼らの入れ知恵で前原氏が法的整理策を封印した可能性がある。
というのは、タスクフォースのメンバーは単にJALの厳密な資産査定(デューデリジェンス)をして再生計画を立てるだけでなく、冨山氏ら3人が役員としてJALに入って再建の指揮を執る考えでいたからだ。法的整理をすると裁判所が選ぶ管財人に決定権が移り、彼らの出番はなくなってしまう。そうした冨山氏らの名声欲が、JAL再生計画を結果的にねじ曲げてきた側面がある。
前原氏は結局、タスクフォースから提出された再生計画書を公表せず、彼らを解散させた。とりあえず企業再生支援機構の手に委ね、11月10日にはその間のつなぎ融資を政府系金融機関の日本政策投資銀行に頼む方針を打ち出した。実は同日の記者会見で、前原氏は「私が言っているのは清算型の法的整理はしないということです。再建型は別です」と微妙に軌道修正している。タスクフォースの呪縛から逃れたからでもあるようだ。
法的整理とは「倒産」を意味するが、会社更生法や民事再生法など会社の事業継続を前提にした再建型と、会社が消滅する破産処理型の2つがある。前原氏の頭にあるのは、もちろん前者のほうだ。前原氏の路線修正は、民主党内で急速に「法的整理を目指すべきだ」とする意見が台頭していたのと軌を一にする。
JAL再建の大きな問題は、3,315億円もの積み立て不足がある年金債務だ。高給取りだったJALのOBたちは、3階建ての企業年金部分が手厚く、年間500~600万円を受給してきた。タスクフォースの報告書によると、これら年金債務などを含めるとJALは現在7,800億円もの債務超過状態にある。
【神鳥 巽】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら