独立系名門ファンドの名うてパートナー(43)が10月28日、自宅で首をつって自殺しているのが発見された。彼はその前日、証券取引等監視委員会からインサイダー取引の疑いで強制調査を受けていた。
<東ハトの再生で一躍有名に>
自殺したのは、大手投資ファンドのユニゾン・キャピタル(東京都港区紀尾井町、以下ユニゾン)のパートナーだった木曾健一氏。証券取引等監視委員会の特別調査課は10月27日、ユニゾンに強制調査に入り、その場で木曾氏はインサイダー取引の容疑を認めた。このため同社は、即刻、同日付で木曾氏を除名し、翌28日には「役職員の株取引の調査に関する第三者委員会」(委員長・国広正弁護士)を設置し、社内調査にも乗り出した。監視委は28日に再度木曾氏を事情聴取に呼んでいたが、約束の時刻になってもあらわれず、不審に思って自宅を訪ねると、本人が死んでいるのが見つかったという。
ユニゾンは国内の投資ファンドの草分けとして1998年に創設され、これまでにアスキーや東ハト、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)、カネボウ(現クラシエホールディングス)、あきんどスシローなどに投資してきた。1号ファンド(99年設定)は380億円規模だったが、04年設定の2号ファンドでは1,000億円を調達。リーマン・ショック以降の金融収縮にもめげず、この8月には新たに3号ファンドとして1,400億円を集めたばかりだった。江原伸好代表ら3人のゴールドマン・サックス出身者とともに、木曾氏は6人いるパートナーの1人だった。
木曾氏を一躍有名にしたのは、菓子メーカー・東ハトの再生案件だった。東ハトは、本業では堅調だったが、バブル期に手を出したゴルフ場開発で多額の債務を負い、03年に民事再生法の手続きを申請して倒産した。ユニゾンはバンダイ、丸紅と組んで新会社をつくり、その新会社が旧東ハトに180億円を払って菓子事業の営業譲渡を受けた。「倒産」というマイナスイメージを払拭しようと木曾氏がとったのは、元サッカー日本代表・中田英寿氏の執行役員への起用だった。中田氏自身もビジネスへの進出に乗り気だったため、チーフ・ブランディング・オフィサーとして主力商品のキャラメルコーンのリニューアルなどに関わっている。2人は、『お菓子を仕事にできる幸福』(日経BP社)を出版している。
もともと、コンサルタント会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」出身の木曾氏は、立て板に水の弁舌で周囲の人を魅了した。高そうなスーツに身を包み、男性向けファッション誌に出ても不思議ではない格好良さでもあった。社長として乗り込んだ東ハトでは若い社員を抜擢し、朝礼や社員懇親会を通じて積極的に社員にかかわった。当時の新聞のインタビューで「おとなしすぎる社員がみるみる変わった」と自賛。業績も急回復したため、ユニゾンは06年に東ハトを山崎製パンに売却し、投資を完了している。
【神鳥 巽】
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