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ドバイ・ショック=新興国バブルの終焉で 日本が受ける経済的「とばっちり」(下)
ビジネス最前線
2009年12月11日 13:01

<原油価格引き上げで日本経済は一層の窮地に>
 米国とて安閑としてはいられない。米国の金融機関の経営危機は沈静化したように映るが、財務諸表を分析する限り、健全性の回復にはほど遠い。米シティグループの場合、連結対象に計上してこなかった非連結の投資ビークルが保有する資産が9,648億ドルもある。こうした非連結資産は、ゴールドマン・サックスにも685億ドル、モルガン・スタンレーも230億ドルあり、その不良化の度合いによっては資本不足に陥る可能性もある。
 非連結資産のほかに、金融当局の手心によって時価で表示せずに簿価計上で済んでいる「レベル3」と呼ばれる資産の問題もある。レベル3資産が全資産に占める比率は、モルスタで12.3%、シティでも7.2%もある。これらも時価におきなおすと、巨額損失として表面化する恐れがある。今後改めて、ウォール街のビッグプレーヤーの健全性問題が再燃する可能性がある。
 米財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)が矢継ぎ早に政策を打ち出してはきたが、米国の不動産市況の悪化に歯止めはかかっていない。直近のデータでも、オフィスの空室率は13%に上昇し、債務者の延滞率も8%を超えた。一方で、財政支出増大やFRBの資産の悪化という劇薬を投じたことで、「ドルの信任の低下」という副作用が心配だ。金価格の高騰は、ドルへの信任低下が背景にある。
 クウェートやアブダビなど産油国のなかには、ドバイへの投資の損失を取り戻したい意識が働いているようだ。クウェート投資庁は12月6日、出資していた米シティグループの株式をすべて売却し、11億ドルの売却益を確保したと発表した。「ドバイの損を穴埋めするため、シティで利食い売りをした」。市場ではそうささやかれている。ドバイの損を取りもどす一番簡単な方法は、原油価格を上げることだ。
 今後、産油国が原油価格の引き上げに動けば、ドル安(円高)に苦しめられる日本経済は一層の窮地に陥ることになろう。日本は、新興国向け貸出が少なくて、本来は傷が一番浅いはずなのだが、一番とばっちりを受ける可能性がある。

(了)

【神鳥 巽】


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