ドバイ・ショックがスーパー・ゼネコンを直撃した。アラブ首長国連邦(UAE)、ドバイ首長国政府が11月25日、政府系持ち株会社「ドバイ・ワールド」と傘下の不動産開発会社「ナキール」が約5兆円の債務支払い延期を要請すると発表したためだ。スーパー・ゼネコンは巨額の工事を抱える。2009年春先からくすぶり続けてきた大成建設と清水建設の統合話が再燃。スーパー・ゼネコン同士の統合が初めて実現するのか?
500億円超の受注額
清水建設と大成建設が抱える受注額は巨額だ。日本経済新聞(11月28日付)は、
<清水建設は開発会社・ナキールから人工リゾート島の高級集合住宅の建設を請け負っている。工事は来年3月までに完了する予定で受注額は500億円超。大成建設はアラブ首長国連邦(UAE)で約530億円の工事を抱え、ナキールとはドバイの海底トンネルなどの工事代金の回収について交渉中だ>
と報じた。
スーパー・ゼネコンのうち、鹿島建設と大林組は、ドバイ市から都市鉄道システム「ドバイ・メトロ」を受注しているが、ドバイ・ワールドとの取引はないという。
全てのプロジェクトが直接影響を受けるわけではないが、万一回収困難になった場合の影響額は、清水、大成ともに100億円~200億円にのぼるとアナリストたちは試算している。
ドバイ・ショックで今年春先から、ゼネコン業界で語られてきた「清水建設と大成建設の統合」説が真実味を帯びてきた。
ドバイ・バブル弾ける
ドバイ首長国は、人口150万人。7つの首長国で構成されるアラブ首長国連邦(UAE)の1つだ。石油が出るわけではなく、不動産が産業だ。日本になじみがなかったUAEについて多くの日本人が知ったのは、08年5月に放映されたNHKスペシャル『沸騰都市ドバイ』だったのではないか。
世界最高層ビル「ブルジュ・ドバイ」(高さ818m、160階建て)の建設現場から映像がスタート。山を削り、海を埋め立て、砂漠を整地。林立する超高層ビル。市内中心部の巨大立体交差。海岸から突き出した椰子の木型の人工島別荘地「パーム・ジュメイラ」。
“ドバイの奇跡”ともいえる都市空間を中東に出現させたのが、政府系開発公社のナキール社。世界中からマネーを集め、建設工事の総額は76兆円にも上ったという。その工事にありつこうと、日本のゼネコンが進出した。
NHK番組のなかで、ドバイにビジネスチャンスを見い出した代表的なビジネスマンとしてとりあげられたのが、大成建設の葉山莞児会長(当時)だ。葉山氏が夫人帯同で、ドバイ政府の高官や政府系開発公社のナキール社幹部を招待して開いたホームパティーには、新鮮なスシネタが築地から冷凍ケースで運び込まれ、同行した職人がスシを握る、というバブル時代を再現したかのような光景が映し出された。
放映後、大きな話題になったので記憶している向きは多かろう。番組を観た中高年ビジネスマンたちの感想は“ドバイ・バブル”。その熱気には、バブルの時代に熱病のように蔓延した不動産狂乱と通じるものがあったからだ。
案の定だ。08年9月、リーマン・ショックによる金融危機が発生、ドバイ・バブルは弾けた。その大打撃を被ったのが大成建設だった。
【日下 淳】
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