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ドバイ・ショック=新興国バブルの終焉で 日本が受ける経済的「とばっちり」(上)
ビジネス最前線
2009年12月 9日 12:59

 砂漠の都市国家・ドバイで表面化した信用不安は、この数年間、世界経済の主役に踊り出た新興国バブルの終焉を意味している。ドバイ・ショックは、世界金融の「破局」を予言している。アラブ首長国連邦(UAE)を構成するドバイ首長国政府が11月25日に発表した政府系企業「ドバイ・ワールド」の債務の返済繰り延べは、世界に驚きをもって迎えられた。ドバイへの融資残高が大きい英国銀行など欧州銀行株とユーロが売られ、つられて上海や東京も株価が下落、円が急騰した。その後、市場は落ち着きを取りもどしているが、安心してはいられない。ドバイで表面化した問題は今後他の新興国に波及する可能性が高いからである。

<利益が出ているプロジェクトはごく少数>
 ドバイで表面化した問題とは、新興国の過剰債務問題である。やたらに「世界初」が好きなドバイでは、首をかしげるような建設プロジェクトが目白押しだった。世界最長の800メートルの高さを誇る高層ビル『ブルジュ・ドバイ』や、ヤシの木や世界地図のかたちをした人工島、灼熱の砂漠の国にできた人工スキー場やスケート場、そしてモダンな高級ホテルとブランドショップが軒を連ねる巨大なショッピングモールの数々。放蕩的ともいえるカネの使いっぷりを助けてきたのは、産油国であるUAEの一角・ドバイが、デフォルトするはずはないと信じた欧州、とくに英国の銀行だった。
 国際決済銀行(BIS)が12月7日発表した四半期データによると、UAE全体の対外銀行債務1,231億ドルのうち、英国銀行むけはそのうちの4割、502億ドル余もある。UAEむけ貸出の大口債権者は、HSBC(170億ドル)やスタンダート・チャータード(77億ドル)、バークレイズ(35億ドル)といった英国銀行だ。
 産油国の一角とはいえ、潤沢な油量を誇る隣のアブダビ首長国と異なり、産出量が先細り気味のドバイは、他人の懐をあてにして開発を進めてきた。それが、周辺産油国のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)からの直接投資と、英国をはじめとする欧州銀行からの借り入れだった。いわば人の財布をあてにして放蕩の限りを尽くしてきたといえよう。こうして造られたさまざまな建設プロジェクトが新たな富を生んでいるのならばいざ知らず、「ほとんどがキャッシュを生んでいない。利益が出ているプロジェクトはごく少数」(地元不動産ディベロッパー『ナキール』の元中堅幹部)と言われる。
 バーレーンの投資銀行SICOのチーフ・コーポレート・オフィサーであるサミール・サリ氏は、「2008年秋のリーマン・ショックはドバイの不動産や株価の下落を誘発しただけでなく、負債の重圧という予期せぬ事態を白日の下にさらけ出しました」と指摘する。気がつくと過大な債務を負っていたドバイは、銀行への返済停止を求めるだけでなく、すでに日系ゼネコンなど建設業者への代金支払いも延滞している。もはや金繰りがついていないようなのだ。
 「つい数週間までドバイ首長や政府関係者は、債権者に負債は支払われると言い続けてきました。それと矛盾する支払猶予の発表を急遽せざるを得ないということは、『ドバイの支配層は相当まずい状況に陥っている』と受け止めざるを得ません」と彼は言う。

(つづく)

【神鳥 巽】


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