■元派遣社員Jさん
2001年頃、本社で勤めていた。当時は業績が下り坂だったこともあり、とにかく社内の雰囲気は悪かった。それが顧客に対する態度にも表れていたのではないか。西新店にも少し勤めていたが、街中で場所も良いにも関わらず、繁忙期でも客が閑散。品揃えは良かったが、売れ筋が少なかった。逆に言えば、死に筋が多かったということだ。わざわざビックやヤマダに行って買っていた記憶がある。社内の雰囲気? 一言で表せば「お役所」。「殿様商売」と言ってもよいと思うが、のんべんだらりとしている印象だった。
■女性経営者Kさん
女性目線でベストの経営の歴史を見れば、私は北田倫さん(創業者・北田光男氏の妻)の功績は大きいと思う。倫さんは満州に渡っており、戦後に引き揚げて夫婦でベストの前身となる会社「バーゲンセンター」を立ち上げた。その会社は倒産したものの、当時は「取引先に迷惑をかけない倒産の好例」として取り上げられていたと記憶している。その後、多くの方の助力を得てベスト電器として再生した。
倫さんは『アカシアよひそやかに香れ』など本を数冊出しているが、とにかく商売に徹していた人だった。あるとき道路を急いで横切ろうとしたとき、たまたま隣で倫さんが一緒に走っていた。当時から有名人だったから「あっ、倫さんだ」とすぐに分かった。道路を渡り終えたあと、「どうぞ、お買い物はこちらで」と倫さんの印鑑が押された商品割引券をくれた。そうやって見知らぬ人にも丁寧に券を配り続けていたからだろう、商戦のときはいつも倫さんの売上が一番だった。
経営論に関しての講演を聞いたことがあるが、本当に勉強になった。倫さんが今のベストの姿を見たらきっと悲しむと思う。私としても、地場の企業が元気をなくしていくのを見るのは悲しい。
企業評価を決めたもの
今回、幅広い層に聞き取り取材をするなかで、賛否両論あったが、おおむね共通していた点を以下、列挙しておこう。
(1)社員教育の不足
この意見が非常に多かった。経営者がダメでも現場の人間は頑張っている、というケースもあるが、消費者からは厳しい視線で見られているようだ。とくに指摘が多かったのは商品説明力。やはり、最後の購入を後押しするのは店員の説明力だ、という人が多かった。
(2)価格と商品に不満
ポイント率の大きな違いや、商品構成などに不満を持つ人が多かった。ベストはもともと、関東勢から見れば強気の価格設定だったが、「ベストしかなかった」、「サービスが充実していた」という理由から「少々高くても」という心理が消費者に働いていた。しかし、圧倒的な価格差(ポイント率の差)を見せつけられると、顧客はそちらを向いてしまうのは時代の流れだった。
(3)年配にとって良かった
これはすなわち、アフターサービスが充実していたということ。もともとのベストの強みでもある。「地域密着型」を掲げ、小規模店舗で展開して業績を伸ばしてきた。たとえばテレビの配線など、年配の人にとって難しい作業もサービスの一環として行なっていた。これで顧客の心をつかんでいったはずだが、そのサービス精神がいつの間にか失われていたことが、顧客離れの要因の1つとなった。
以上のように、消費者は消費者なりの意見を持っているが、これが当のベストに届かなかった(聞こうとしなかった)というのが現実だろう。
なお、『Net-IB』読者の皆様のご意見も広く集めたいと思う。ぜひ、https://www.data-max.co.jp/ask.htmlまで皆様の想いをぶつけてほしい。
【大根田 康介】
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