<さすが九電工は、決断して子会社を潰す>
(株)九電工コミュニケーションズ(以下、九電工コム)が特別精算をした。経緯を知らない人たちは驚くだろうが、「さすが九電工は決断をした。ただし、時間がかかりすぎたな」というのが弊社の率直な感想だ。
九電工コムは2007年3月当時において九電工常務取締役であった三島周作氏が社長を務める、九電工の完全子会社である。同社の業務は、九州の温泉宿に特化した宿予約サイト『温ぱら』の運営による予約斡旋事業であった。世間では「天下の九電工がこんな業種にまで手を染める必要はなかろう」という顰蹙(ひんしゅく)めいたことも囁かれていた。この当時は、時代を見据えた九電工の多角化戦略がピークに達していたのである。
2007年3月時点での九電工コム関係者の証言によると、『温ぱら』サイトの企画立案は(有)クラウド(本社・福岡市博多区、以下C社)が行なっていた。その際、「C社の扱いがおかしいのではないか」という問い合わせが弊社に殺到していたのである。早速取材をしてみると、不可解なことばかりが判明した。C社が制作したシステムにエラーが発生したにもかかわらず、同社の社員たちに悪びれた素振りもないことも奇妙であった。
九電工の関連会社のソフト会社に「オートメーション・テクノロジー」社があった。この会社が、九電工コムの『温ぱら』サイト立ち上げの情報を掴み、見積を出そうとしたら断られたという事実も聞きだした。「関連会社に対して見積提出を断るとはおかしな話だ」と、取材した記者から報告があった。次に異様だったのは、システム構築代が破格であったことだ。「5,000万円で済むところを、8,000万円使っているのではないか」という情報も飛び込んできた。「月々のソフト開発追加料も、400万円が妥当なところを600万円から1,000万円払っているのではないか」というたれ込みもあった。
そこで徹底的に取材をして、弊紙『I.B』2007年3月5日号(No.1214)でこの疑念を報道した。明白になったことは、九電工コムの三島社長の身内が、C社の中心部に座っていたという事実であった。「組織構造的な不正よりも、身内の癒着だな」という取材結論を下した同時期に、九電工本体が九電工コムの特別監査に着手したという事実をキャッチした。「あとは親会社が毅然と正常化する」ことを信じて、記事連載を3回でストップした経緯がある。
<自力浄化ができなければアウト>
九電工も、さまざまなコンプライアンスに触れる苦い経験も積んできた。会社の恥部を露呈されたならば、速やかな解決策を講じるようになってきたのは喜ばしい限りである。九電工コムの不正摘発は、多角化経営に必要な監査能力を高めることに役立ったことであろう。「激変時代に、生じたトラブル克服を迅速に完遂できる激変対応力を身につけた」九電工は、潜在的修復力を有していることが証明された。
このシリーズの結びになるが、片やベスト電器はお粗末さだけが目立つ。身内の不正を是正できない、呆れはてた末期組織状況ではビックカメラもびっくり仰天するであろう。事実を知るほどに、臍(ほぞ)を噛みたくなる。ベスト電器の現状そのままで、無策で商圏を引き取るようなことはしまい。
あー、4,000億円規模の企業でも、5年という時間の経過とともに死に体に追いやられるのである。ああ無常!!
(完)
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