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経済小説

飽くなき権力への執念 [13]
経済小説
2010年1月28日 11:02

野口 孫子

策略 (2)

 岡田と木村は、坂本の名古屋時代からの腹心の部下である。自分の常務営業統括本部長昇格とともに、本社にある統括本部に転勤させていた。
 専務に昇格すると、自分が社長になることを見越して、岡田を社長室に移動させていた。
「岡田、社長宛てにわしの悪口を書いた投書がようけ来てるんや。社長も最近はわしに疑いを持っとるみたいやけど、なんぞ知ってるか?」
「その投書の件は社長から聞いてます。えらい剣幕で調べろと言われましたが、『坂本専務がそんなことされるわけありません』と断っておきました」
「そうか。しかしな、社長は関連企業部担当の尾島常務と購買部担当の細川常務に嗅ぎ回らせてるらしいぞ。そうやろ、木村!」
「そうみたいです。しかし、なんぼ調べられても、わかるようなことはありません。業者には口封じしておきました。証拠は何も出ません。専務は堂々としていてください」
 木村は事もなげに言い放った。部長の木村はゼネコンから中途入社した人材だった。ゼネコン業界の工事現場では、下請けから袖の下、いわゆるバックマージンをもらうことが常態化していた。そうした慣習を定着させたのが、この木村であった。
 もともと私利私欲の強かった坂本は、木村の口車に乗り、悪しき慣習に手を染めてしまっていたのである。名古屋では、何千もの部下の眼が光っている。悪い噂はどこからともなく伝わるものだ。
「正式の社長就任まで、まだ半年以上もある。このまま投書が社長に送られ続ければ、いきなり白紙に戻る可能性もある。下駄を履くまでは何があるかわからん。なにかいい手はあるか?」
 坂本は苦悩の色を浮かべながら、岡田に聞いた。
「まず、役員の中の誰が社長と会って、どんな話をしているのか、チェックすべきでしょう。そのためには、次期役員登用を餌にして、秘書室長を抱き込む工作をする必要があります」
「そうか。その工作については、岡田君が根回ししてくれるか」
「わかりました。それから新聞社に、次期社長は坂本氏に決定!とリークさせてはいかがですか?経済紙に大きく記事を載せて、公に既成事実を作りましょう。もし中井社長が否定すれば、その理由を答えねばなりません。企業イメージを悪くすることになりますから、否定することはできないでしょう。これを仕組めるのは広報部長の松野です。こっちも役員昇格を餌にやらせるしかありません」
「頼むぞ、岡田!これから根回しして、1か月以内に実行できるようにしてくれ」

(つづく)

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