九州地区は、ベスト電器の牙城として基盤は揺るぎないものと思われていた。しかし、1998年代の「北関東御三家」ヤマダ、コジマ、ケーズデンキ(鹿児島でFC展開)の相次ぐ九州進出によって、それまで「攻め」(全国への店舗展開)に徹していればよかったものが、今度は「守り」(顧客離れの防止)に注力する必要が出てきた。
当時のベストは、ヤマダの博多本店オープン直前の取材に対して、「単なる安売り店とサービスを充実させた当社とは業態が違い、顧客離れは起こらないと確信している」、「長年、九州でやってきたノウハウがある」、「九州の家電市場に刺激が加わってよいのでは」と余裕を見せていた。
しかし一方で、従来の小型店から大型店への店舗転換(スクラップ&ビルド)を余儀なくされていた。ベストの本来の強みは小型店を中心にして各地域に根ざした店舗展開だったが、ちょうどこのころ商業施設の大型化に伴い小型店では競争にならず、また店舗の老朽化も相まって採算の低い店舗のスクラップを進めていた。
また、「家電の需要が落ち込んでいるので、家電に変わって集客力の高い商材が必要」との理由から薬・化粧品・雑貨・カメラなどの売り場を設けるなど、本来の業態も転換せざるを得なかった。「小回りが利いて、価格も安いし、どこでもあるので修理などに便利」、「家電はやはり専門家がいるところで」という強みから獲得していた顧客層も大きく変わることになる。
「顧客は離れない」という確信を持っていたベストだったが、アフターサービスよりも「大型店は品揃えがよく便利」、「価格こそが魅力」という点で顧客を満足させる店舗が売上を伸ばす時代だったにも関わらず、この波に乗れなかった。当社発行誌で『今後の戦略(アフターサービス充実)とは異なり、消費者は価格へとシフトされるのではないだろうか。そうした時、はたしてベスト電器は関東勢を打ち破れるのか』と疑問を呈していたが、結果としてこれが現実となってしまった。
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【大根田 康介】
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