家電製品の魅力が低下したから薬や化粧品を置く、商材を増やして店舗を大型化する――たしかにベスト電器にとって、一時的には集客力がアップしたかもしれない。しかし、この時点でヤマダ電機やコジマの真似事をしても到底追いつかないことは目に見えていたはずだ。
かつての「安売王」として登りつめた売上高日本一の座から転落したベストは、当時、「消費税率の引き上げ、所得減税の廃止、医療費負担の増大、天候不順、モノ余りなど消費環境が悪かった」、「福岡本店は免税コーナーがあり、韓国からの観光客が同コーナーの売上の大半を占めていたが、昨秋以降は韓国からの観光客が大幅に減少、韓国語の店内放送をやめたほど」と弁明していた。
しかし、ある業界関係者の「環境が悪いのは当たり前。そのなかで売上を伸ばすサービスが不足している。地域一番店として、長年大した企業努力もせずに売上が伸びていたので、その地位に胡座(あぐら)を書いていたのではないか」という厳しい意見もあった。
当時のベストは、2001年末時点で東南アジアや中国など4カ国に拠点を構え、北は北海道から南は沖縄まで500店舗以上を有していた。とは言え、当時首都圏では無名な存在だった。なぜなら、フランチャイズ店こそ展開していたものの、そのころまで直営店がなかったためだ。ベスト直営の大型店が首都圏にオープンしたのは、2000年3月の横浜・日吉東急デパートが最初だった。
当時は一地方から首都圏攻略を目指す地場企業も多かったが、商品に対する嗜好や人の流れなど地域ごとに特色があったため、東上作戦の途中で撤退せざるをえなかった企業も多かった。ベストも例外ではなかったのだろう。しかし、ヤマダやコジマの九州進出を受けて、ベストは2000年に3カ年計画を策定し、関東・関西圏での出店強化を図って反攻に出た。
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【大根田 康介】
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