家電戦争のなかで「ベスト電器は高い」というイメージが定着してしまった。しかし、当時は単品を見比べていけば価格競争で必ずしもベストが劣っていたというわけではない。ビックカメラの勝因は(1)全長200mの直線移動距離と分かりやすい売り場構成、(2)還元率の高い10ポイント制、(3)天神の中心が南下した、という点にあった。
ビックカメラ天神1号店は200mのうち道路によって4ブロックに分断されている。出店当時はマイナス要因になるかと思われたが、ブロックごとに商品コンセプトが明確化しており目的の商品にたどり着きやすい。そのため、歩いていても苦にならないというメリットが生まれた。
ポイントに関しては、当時ベストは3%で消費税分にも満たず訴求力が低かった。反対にビックカメラの10%は訴求力が高い。結局、消費者のなかにこの「実質1割引」という計算感覚が刷り込まれたことで、「ビックカメラは安い」=「ベストは高い」というイメージができあがった。
流通業界においては「あえてライバル店がいるところに出店する」という企業もある。これは「ついで買い」を狙うもの。ビックカメラ周辺は大手百貨店や商業施設がひしめいており、立地が非常によかった。翻ってベスト周辺には、天神コアやビブレの集客力が落ちていることもあり「ついで買い」を狙える施設がない。つまり孤立して活気がないのだ。それは現在の周辺の人通りを見るだけでも一目瞭然である。
加えること、人材育成の面でもビックカメラとベストとの間では大きく差があった。当社発行誌に記された当時の様子を一部抜粋する。
「(ベストには)売り場に人がいない。坪当たりの販売員数ではビックカメラに比べ圧倒的に少ない。しかも客に対する心配りが消えているから呼ばないと来ない。その点、ビックカメラは販売員数が多い上に、すぐ側にきて『説明しましょうか』と声をかけてくる。この違いが売り上げに大きく影響する。」(2002年1月14日号)
次回から、消費者11名への取材に基づいて、勝敗が分かれた原因を消費者目線で検証していきたい。それぞれ立場は違えども、興味深い指摘をしている。おそらくベスト関係者が思っている以上に、消費者は厳しく、そして的確に観察している。
なお、『Net-IB』読者の皆様のご意見も広く集めたいと思う。ぜひ、https://www.data-max.co.jp/ask.htmlまで皆様の想いをぶつけてほしい。
【大根田 康介】
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