積水ハウスが今回発表した中期計画のなかには、「国際事業をオーストラリア、中国、ロシアに拡大して、寄与していく」という異色な項目が入っていた。
前向きな計画であろうと思われるのだが、果たしてこれが、この2~3年のうちに成果としてあげられる事業なのか。いささか疑問に思うし、唐突感をゆがめない。
少子高齢化と市場の縮小で、国内の住宅販売に手詰まり感が出ている。各社、海外に進出しようと模索しているのは事実だ。
大和ハウスは数年前から中国に進出を図っていて、大連で分譲マンションの販売を手掛けている。住友林業も海外の売上比率を上げる目標を立てている。
海外での住宅販売に関しては、積水ハウスは20年前に当時の西ドイツに進出して失敗している。このことについては、中興の祖である元田鍋社長が「高くついた経験だった」と回顧録で述懐している。海外に進出するにあたっては、生活習慣の違い、法律の違い、地盤、気候、環境の違いなど、現地の綿密な調査に多大な時間と労力がかかるものだ。そのことを経験でわかっているにもかかわらず、それでも海外進出を中期経営計画に盛り込んで新しい事業の柱に据えようとしているのが、国内の行き詰まりを如実に表しているように思う。
そもそもの発端は2年前、役員がロンドンの金融街シティに行った折、日本の証券会社を介してシティの投資会社を紹介されたことからだった。
当時国内では、欧米の投資会社に資金の引き揚げを開始され、また新たな事業の提案にも乗ってこなくなり、開発事業の受注が極端に減少していた。そんな国内での行き詰まりのときに、「タイミングがよくて、ウマイ話」と受け入れられたと思われる。
経済が大沸騰していたドバイは、設計段階から大型プロジェクトの超高級マンション、ホテルが飛ぶように売れていた。NHKでも紹介され、日本の各界から視察ラッシュが続いていた。誰しもが、そこに儲けるチャンスを見出していたのだろうと推察する。さらに、資源大国で活況を呈していたオーストラリアも紹介されていた。
これを機に、当時の和田社長は海外事業を展開することを決めたのだろう。
2009年(平成20年5月)に国際部が新設されているのと、ときは符号する。
【野口 孫子】
※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。
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