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経済小説

飽くなき権力への執念 [34]
経済小説
2010年2月26日 09:41

野口 孫子

バブルの再来 (3)

 山水建設の業績は急速に回復してきた。日本経済は株価と土地価格の急騰により、かつて経験したバブル経済を思わせるような様相を呈してきていた。業績を回復し始めたのは、山水建設ばかりではない。競争相手の日本建設はもちろん、日本のあらゆる企業が業績を回復しつつあった。
 開発事業を担当する中村専務のところには、全国から土地情報が上がってきていた。特に興味を惹かれるのは東京、大阪、名古屋等からの情報だった。
 情報は主に不動産屋からが多かった。
 その頃中村は、坂本からある不動産屋を紹介された。「わしの昔からの付き合いの不動産屋なんだが、会ってみてくれ。いい情報を持ってきたら、使ってやってくれ」とのことだった。その不動産屋は松井不動産といい、小さな街の不動産屋の域を出ないほどの規模だった。中村は、松井不動産は大した情報は持ってこないだろうと予測していた。
 そうした時、大阪の御堂筋沿いにある、大きな空地の話が舞い込んできた。試算によると、総事業費500億円くらいの案件である。
 いつの間にか、時代は大きく変化していた。今まで見向きもされなかった土地を買い漁る時代になっていた。土地の仕入れをめぐって、マンション業界を中心に、外国の投資会社等も含め、各社がしのぎを削る時代になっている。
 そのため、大都会を中心に、バブル後ずっと値下がりを続けていた土地価格が反転、値上がりに転じていた。
 中村はどうしても、御堂筋沿いの土地が欲しかった。山水は相場より30%以上高い価格を提示して、これを落札。当然、業界の評判になった。
 「山水は相場を無視して高買いをし、相場を吊り上げている」との非難の声があがった。
 坂本に「今回の案件では、松井不動産を仲介業者として入れてくれないか」と言われた中村は驚いたが、社長の要請を断ることはできなかった。松井不動産に対しては当然、仲介手数料を支払うことになる。
 山水は豊富な資金にモノを言わせ、欲しいものを高買いすることができた。マンション業者とは違って、高買いしても物件に付加価値をつけ、様々に企画立案できるだけのノウハウを持っていたのである。

(つづく)

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