今1月期の決算は、前述していたように、積水ハウスは過去の不良資産の評価損を計上、赤字となった。これを市場は前向きととらえたのか、株価には全く影響しなかったことは幸いであった。
赤字発表と同時に中期計画も発表しているが、2月からスタートの今期は創業50年となる記念すべき期ということもあって、非常に厳しい時期のなか、目標とする500億の経常利益と記念配当を約束している。
「住宅ローン減税」、「補助金」、「生前贈与非課税」、「住宅版エコポイント制の導入」と、国を挙げての支援策が打たれ、住宅販売が増える可能性も大きいかと思う。その支援策によって、積水ハウスを含めた住宅産業が浮揚することを期待したい。
ただし、積水ハウスの中期計画の中身を読むと、従来と変わらない施策の羅列で、国の後押し以外は目新しい施策がないのが不安である。前期、前々期の焼き直しを読んでいるようである。
「コストの削減」、「人員配置の見直しなどでの経費圧縮」、「工場生産商品の拡販、分譲」、「マンションの拡販、賃貸事業」、「リフォーム事業の拡販」、「エコに対する取り組みをより一層強化する」など。
前回触れたように、技術革新が伴わないエコは、拡販にはすぐには結びつかないことだろう。エコに熱心に取り組んでいるという、クリーンな企業イメージの定着は期待できるかもしれないが…。
唯一の目新しい施策は、「海外事業」――「オーストラリア、中国、ロシアに進出する」とある。このことについては、次回で触れる。
従来と変わらない施策で、現在があるのであれば、もっと大胆な改革を実施しなければ、到底、中期計画の達成は難しいのではないだろうかと思う。
積水ハウスの力が、相対的に落ちてきている原因は何なのか。それを全社挙げて検証しなければ、この大不況下でも総合的に力をつけているメーカーには、到底勝てないのではないだろうか。国の住宅への優遇措置は積水ハウスだけに限ったことではなく、平等にどのメーカーにも恩恵を与えるものだからだ。
民主党のように、一人の権力者の顔色を見ながら、「物言えば唇寒し」で正しいことも言えないような雰囲気であるならば、心ある社員の士気も薄らいでしまうことだろう。まずは謙虚に、「積水ハウスの栄光はもう過去のものである」ということを認識すべきだ。
【野口 孫子】
※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。
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