会社トップは、自社に事故隠しや法令違反隠しなどの隠ぺい体質はないか、よく組織をチェックしなくてはならない。
内部からの告発が起こるのは、会社のなかで不都合なことが起こっていて、良心を持った現場の人間がそれを明らかにしようとしても、上司が聞いてくれない、納得する議論もされない、本社に訴える手段もない、さらに上司や上層部が隠ぺいしようとしている。そのような状況下で正義に燃える告発者は、やむなく外部のメデイアや行政に告発文を送ってしまうのである。
当然のことながら、会社トップは自社で内部告発が起こった場合、癪に触ることだろう。しかし、内部告発が起こってしまう土壌を作ったことを、トップはまず反省すべきである。内部での意見の不一致を解消するシステム、中間管理者のトップに知られることを恐れた隠ぺい体質、を放置していたのはトップである。
日頃、会長や社長は、「積水ハウスは、自由闊達な意見交換ができる企業風土を持っている。この伝統的社風は、上司と部下、先輩と後輩とが良好なコミ二ケーションを保ち、喜びを分かち合い、感動を共有できることだ」とたびたび訓示している。
しかし、そんな口先だけの単なる訓示を真に受けて、日頃無理やり押さえつけられているような人間が、会長や社長のところに意見上申に行く勇気があるわけがない。
不祥事に関しては透明度を高くし、どんな小さなことでもトップから発信することだ。不祥事を隠し、原因を不透明のまま放置して、末端だけを処分しておしまいというような体質のままであれば、いくら「コミュニケーションを良くしよう」と訓示しようが、所詮は空念仏である。
営業に対する契約確保のプレッシャーによって、望むと望まないとにかかわらず、苦し紛れに顧客と関係ないところで見せかけの契約をさせてしまう。そんなことから顧客に足元を見透かされ、トラブルの原因になるケースもあると聞いている。
個人としても数字が欲しい、組織にしても数字が欲しいということで、つい問題を見逃してしまう。こんなことがあれば、本社に粉飾された数字が何食わぬ顔して報告されていることもあるだろう。
粉飾された数字を知らないふりをしている勢力がいて、事実を隠したがったり、一時しのぎをさせたりしているのは、トップの責任である。
真の経営者は、虚業でなく、実業を追求すべきであろう。
【野口 孫子】
※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。
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