気がつけば、積水ハウスもいつの間にか第2位に転落。後発の会社の追い上げも急ピッチである。
孔子が「『食』『武』『信』のなかで、あえて、一つを選ぶなら、どれを選ぶか」と弟子に問うた。これを「治国三要」という。
「食」とは経済、金のこと、「武」は武器のこと、「信」は信頼のこと。どれも大事であるが、どれか一つを選ぶとなると弟子は迷った。
すると孔子は、「信」が一番大事なものと説いたのである。
これは、経営者が社員の信頼を得られなくては、会社は成り立たないということを言っているのである。組織に「信」があれば、一致団結、大きな力となるのである。
現在の積水ハウスに欠けているのは、この「信」のように思える。
今、色々と話題になっているトヨタ社の「トヨタ博物館」に行くと、映画『007は二度死ぬ』で使われたトヨタ2000GTコンバーチブル『ボンドカー』が展示されている。その華やかな車の陰にパブリカが展示され、その説明には「安価を追求しすぎて、高級志向の顧客の心理を読み間違えた」との反省の弁が書かれている。トヨタは銀幕の成功の証に酔いしれず、できれば隠しておきたいパブリカの失敗をも白日の下に晒し、明日への糧としていた。
そんなトヨタでも、今回のような安全を疑われる事態になっているのは、良き伝統が徐々に忘れられつつあるのかもしれない。
経営者は、自らの胸の内にある博物館に飾るべき教訓が、いくつもあるはずである。失敗を隠さず、それを糧に、次の飛躍に結び付けばいいのではないか。
田鍋社長時代には、役員間も、幹部間も、社員間も、自由闊達に意見を闘わせていた。社長が「ダメだ!」と言うにも関わらず、会社を守るために、自らの首をかけて事業を推進した幹部もあちこちにいた。命令違反を推奨するわけではないが、皆が燃えていたし、燃えさせるものがあった。
今、一番必要なのは、社員のやる気を引き出すことだ。ことなかれ主義で、安全に何もしないことが良いことだという風潮が会社をダメにしていく。
まずは、会長や社長などのトップが、良き伝統を忘れないことだ。社員にその責を負わせるのでなく、心の底から「運命共同体」という認識を持つべきだろう。
積水ハウスは今年、50周年記念の年を迎えている。今一度、原点に立ち返り、真の意味の、自由な雰囲気の会社に回帰出来ることを期待したい。
積水ハウスが、沈まぬ太陽のように、永遠に輝き続けること祈る。
【野口 孫子】
※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。
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