ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

業界を読む

過去の一枚岩崩壊の現状 管工事業界(下)
業界を読む
2010年3月25日 11:00

<入札方法の変更>

 何ごとも右肩上がりのままであれば波風は立たず、今まで通りに推移していたかもしれない。しかし、地方自治体の多額の負債が納税者の見方を変えた。10年くらい前から名前が浸透し始めた「市民オンブズマン」の台頭である。
 たしかに納税者側としては、本当に税金が正しく使われているのかどうかについて、疑問がわいてくるのは当然のこと。その自治体が借金まみれであるならば、なおさらである。そのため、「市民オンブズマン」を中心に地方自治体主体の各公共工事に対して、それが適正な価格だったのかどうかの情報開示を求め始めた。積算から受注のやり方などの建設業を中心とした旧態依然の受注方法は「談合」という名のもと見直され、業者を指名する「指名入札競争」や、資格を持てば誰でも参加できる「一般競争入札」、最近では大型公共工事中心だった「総合評価方式」での発注に移行しつつある。
 管工事業界でもその例には漏れず、公共工事抑制の動きや厳しい競争入札で受注が困難になり、利幅も厳しくなっている状況にある。さらに、マンションや商業ビルの箱物建設が大きく減少したことで、民需による受注減が表面化。公共工事の減少も加わり、ダブルパンチとなって設備工事業界は厳しさが増している。

<競争激化で叩き合い>

 【表】をご覧いただければわかるように、最近の福岡市の入札結果では、最低価格での入札が多くなっている。この傾向はとくに今年に入ってから表面化しており、業者の間では「公共工事はくじが当たり前」とも聞かれる。
100325_kankoji01.gif
 「設備機器を自前で持つ本業の本管工事であれば、最低価格でも少しは利益が取れるでしょうが、設備業者が本管工事を取っても利益は期待できない」、「利益が取れません」と業者は答える。 原油価格の高騰による資材の値上がりに加え、前述した公共工事における競争の激化、さらには市況の冷え込みによる民需の後退など、管工事業界を取り巻く環境には厳しいものがある。

100325_kankoji02.gif このため、背に腹は変えられないような受注競争に陥っているのはたしかである。その影響で、今までは暗黙の了解であった東西の地域棲み分けが崩壊したり、本管工事業者が積極的に入札に参加するなど、業界内は混沌とし始めた。過去には、設備工事業者が元請となり、実行部隊となる本管工事業者を下請として本管工事を請けていた慣例も多かったと聞く。今ではどの業者がどのような金額で札を入れるのか分からないような仕組みとなっているので、設備も本管もなく入札に対して各社疑心暗鬼に陥っているのが実情のようだ。しかも、本管工事を老舗設備工事業者が落札しても、下請の本管工事業者が決まらない状況が起こるなど、業界内での結束も綻び始めた。
 福岡地区では、西方沖地震での地中埋設管の耐震性がクローズアップされたことなどによって、箱物以外での公共工事―本管工事の発注は多くなっている。先を見込んで、設備工事から本格的に本管工事業者へと華麗なる転身を遂げた業者もいる。
 しかし、数で勝る設備工事業者としては、箱物の建設がない限りは大量の受注は見込めない。それに本管工事にしても、発注は多くなってきているといえども、過去のような利益は見込めない状況である。
 過去には一枚岩と言われて久しい管工事業界。しかし、とある設備工事業者が「長く厳しい真っ暗闇で、先が見えない」と話すように、業界には悲壮感が漂う。景気回復の兆しは、果たしていつ見えてくるのか。かつて元気だった業界の復活を切に願う。 

(つづく)

【道山 憲一】

*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

業界を読む一覧
業界を読む
2011年6月14日 14:31
業界を読む
2010年11月 4日 13:45
業界を読む
2010年3月25日 11:00
業界を読む
2010年3月24日 15:48
業界を読む
2009年10月23日 08:00
業界を読む
2009年10月22日 08:00
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル