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経済小説

飽くなき権力への執念 [35]
経済小説
2010年3月 1日 10:32

野口 孫子

バブルの再来 (4)

 開発事業は土地の仕入れに始まり、周辺の立地条件に合わせた事業計画の立案から工事の完成・販売まで、2年~3年はかかる。その間、土地価格は30%以上も値上がりしてしまう状態になっていた。そのため、山水建設がてがける案件も、当初の事業計画より高収益を上げるようになっていた。
 坂本、中村にはフォローの風が吹いていた。
 こうして開発事業は、山水建設の事業のなかでも、柱というべき存在に育ち始めていた。中村は坂本社長から全幅の信頼を受けたことにより、肩をきって歩いていた。
 その頃、どこからともなく、坂本に対する黒い噂が立ち始めていた。噂は、坂本の古くからの知り合いである松井不動産に対するものだった。松井不動産が中村が仕入れる大型の土地取引の仲介業者を務めるのは、明らかに能力以上のことと思われた。誰もが「何かうさんくさいもの」を感じていた。坂本には、未だ払拭されていない幾多の黒い噂があるため、こうした不透明な状況が生じるたびに、「また悪いことをしているのではないか」と思われてしまうのだ。
 善小なれど、これを為さざる事なかれ
 悪小なれど、これを為す事なかれ
とは、『三国志』の劉備が息子に語った言葉である。
 小さな善だからといってやらずにいてはいけない。小さな悪だからといってやってはいけない、という意味をもつ。
 リーダーである社長の存在価値は、結局、人間としてどう生きるかに尽きる。
 トップにとって最も肝要な要素は、「クリーン」「ビューテイフル」「オネスト」であると、伊藤忠商事の丹羽会長は述べておられる。
 どこから見ても、坂本にはクリーンさが感じられないし、経営者としての美徳にも欠ける。自分にすりより、ゴマをする人間だけを重用し、ほかの社員を公平に扱おうとはしない。
 人は親や上司の背中を見て育つものである。背中には、その人そのままの姿が映るものである。とりつくろうことも、飾りつけることもできない。日常の行動が伴っていなければ、どんなに立派な言を吐こうとも、説得力をもつことはできない。部下は「偉そうに!日頃やっていることと全然違うやないか」と、社長の嘘を見抜いてしまうものである。

(つづく)

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