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経済小説

飽くなき権力への執念 [44]
経済小説
2010年3月12日 09:52

野口 孫子

権力の全盛期 (7)

 中村副社長の威光も全盛期を迎えていた。中村は東北出身で主に東北管内の青森、盛岡、東北営業本部、仙台特建事業部を歴任していた。その頃から、仙台の佐藤造園と親しい関係を作っていた。
 しかし、当時は仙台支店長の佐々木と高村造園との癒着がひどく、仙台では佐藤造園には殆ど仕事がなかった。しかも佐々木が取締役東北営業本部長に昇進したため、高村造園は全盛期を迎え、山水の東北地区の造園工事を一手に受注していた。
 「佐々木と高村造園の間で何かあるのでは」という噂が立ち始めていた。この種の問題はウワサなので、確証はないのが常であった。
 しかし、社員は「火のないところには煙は立たない」と思っていた。坂本社長にも黒い噂があり、役員は少々真似しても、許されると思いあがっていたのだ。
 だが、佐々木は噂に抗しきれず、退任をしたのである。佐々木のいなくなった東北では、「佐々木と癒着していたとして、高村造園は出入り禁止」状態になった。
 これを機に、中村副社長に取り入っていた佐藤造園は息を吹き返したのである。
 盛岡支店では大きな分譲地の「町並みづくり」のための街路樹、各戸建の外構造園の設計を地場の業者と打ち合わせが終わりかけている段階で、中村副社長から「佐藤造園を使ってくれ」と設計担当課長に電話が入った。設計課長は「折角ここまで打ち合わせしてきたのに、天の声で、遠い仙台の佐藤造園にしなくてならないのか」と悔しそうに、苦々しく語っていた。今は飛ぶ鳥を落とす勢いのある中村の言うことを聞かざるを得なかった。
 後の話になるが、中村は自分のリタイヤ後の余生を過ごすため、武家屋敷のある角館に土地を購入していた。そこにリタイヤが確定的になった時点で自宅を新築し、造園工事は佐藤造園に依頼していた。そこは豪華な庭園を擁していた。佐々木を追い落とした中村でも裏では中村で、結局は自分も同じことをしている。何も悪いことはしていないのかも知れないが、「何かがある」と疑われてもおかしくはない。
 坂本以下、地位を利用し、自分の利益だけ追い求めている姿を見ている社員に、いくらいい格好して「コンプライアンスを守れ、原点に戻り、頑張ろう」と言っても、もはや、まともに聞く者はいない。
 山水建設の役員は腐りきっているとしか言いようがない。

(つづく)

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