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経済小説

飽くなき権力への執念 [47]
経済小説
2010年3月17日 09:52

野口 孫子

不祥事の多発 (2)

 会社創設以来の「営業停止処分」を喰らってしまった。
 事あるごとに、全社員に対して「コンプライアンスを守れ」と指示しているにも拘わらず、この体たらくである。
 「コンプライアンスに関心がない」というよりも、「あんたたちのやっていることを思えば、聞く耳は持たぬ」という事のあらわれでもあった。

 企業の社長は「業績に対する経営責任」と「会社の将来を築く部下を育てる責任」がある。しかし、坂本は部下を育てることを見落とし、自分にゴマをする人間だけを集め、反抗する社員を制裁するかのように「左遷」を繰り返して、体制を維持してきた。
 要職から遠ざけられた有能な正義感のある社員は、やがて「やる気」をなくしてしまう。そして立ち枯れた社員は非戦力になるだけでなく、「抵抗勢力」になってしまうのであった。内部から外部にリークされるのは坂本に対する間接的な「報復」である。
 このようなことは決して好ましいことではないが、坂本ら首脳陣がこのような状況を理解できず、「社員、個人の資質に問題がある」と認識しているところに問題の解決が遅れてしまった原因があったのである。
 「営業停止処分」後、社内では「コンプライアンスの厳守」のキャンペーンが声高に行なわれた。しかし、その真っ只中、再び「確認申請許可看板の虚偽」の記事が岡山の新聞に躍ったのであった。これも社内からの新聞社へのリークであった。
 確認申請の許可が取れていないのに、取っているという偽の許可番号を記入して看板を立て、工事を進行させていたのである。
 坂本、首脳陣は個人の資質の責任にして、確認申請係を懲戒解雇処分にした。
 その社員は金儲けのため偽装したわけではない。支店長、次長から
「確認を早く下ろせ!何をボヤーとしているのか!」
「着工が遅れたら、今期の売上計画が達成できないではないか」
 と目に見えない無理強いをされていたのだろう。
 支店長、次長は営業本部長のプレッシャーに、本部長は坂本社長のプレッシャーに押しまくられ、自分を失わされているのである。彼らは、そのような体制の「犠牲者」なのだ。金儲けも何にもないところに、自分のリスクをかけて、こんな馬鹿なことをするメリットはどこにもない。
 「やったのは部下」として責任を回避する首脳陣。幹部として、部下を指導育成することをすっかり忘れてしまっていた。

(つづく)

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