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経済小説

飽くなき権力への執念 [48]
経済小説
2010年3月18日 09:25

野口 孫子

不祥事の多発 (3)

 部下が建築確認申請偽装を行なった深い理由を調査することもなく、「やったのは部下」としてしまう体質の社長以下首脳陣は、部下を持ち駒としか思わず、使い捨てにし、部下を指導育成することを忘れていた。
 部下のせいにする前に、「幹部として、自分はどうなのか」と胸に手を当て考える必要がある。
 あの経済学者ドラッガーが、経営者がどうしても身につけなければならないのは「品性」であると言っている。この「品性」とは、経営という仕事に対する高い使命感、社会の発展と幸福を願う高邁な経営理念を持っているということだ。そこから透明度の高い倫理観、「品性」が漂うのである。
 坂本のこの体たらくは、どう見ても、こうした「品性」には程遠い。
 山水建設の創業社長山田は
「リーダーシップをはきちがえてはいけない。部下を引っ張ろうとして、強く引っ張り上げたら綱は切れてしまう。上役は部下を支援するものと考えるべきだ」
「山水建設という船に乗った以上みんな仲間だ。たまたま社長、役員、部長、支店長なのであり、長という肩書きがついたからといって、偉くなったと勘違いしてないか。役職が偉いのであってお前たちは偉くない。威張っていたらいかん」
 と諭していた。
 松下幸之助は「100人までは命令で動くが、1000人にもなれば頼みますと、1万人にもなれば拝む心がないと人は動かない」と言っていた。
 「威張るな」「拝む心」というなかに名経営者の「品性が」あるような気がする。
 山田の教えを忘れたかのように、独断専行、強権で経営を行なっている坂本と、その取り巻きは甘い汁を吸っていた。
 その彼らが、いくら「コンプライアンス遵守」と叫んでも、守れるはずもない。またまた沼津で、岡山と似たような確認申請偽装事件の報道がなされたのである。
 表面上は権威がまかり通っているように見えるが、トップ坂本に「徳」(仁、義、礼、智、信)がなければ、各事業所では人心は乱れ、士気は低下し、会社は衰退に向かうのである。まさに、その兆候が出ていると思わざるをえない。

(つづく)

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