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経済小説

飽くなき権力への執念 [49]
経済小説
2010年3月19日 09:50

野口 孫子

不祥事の多発 (4)

 確認申請虚偽事件が2件続いてしまった。坂本をはじめ幹部首脳には
「あれほど口酸っぱく『法令遵守』と言っているのに」
 という思いがあった。
 「やったことは担当個人に起因すること」だとして、結局は個人の責任に帰し、処分した。社員が個人として、何のメリットもないことをすることは考えられない。いずれ、バレて、自分も会社も大変なことになることは、容易に想像できたろう。それを、社員があえてやることの原因はもっと深いところにあるはずである。しかし、ロクにそれを調査もせず、個人の責任として、落着させたのである。
 しかも、岡山事件は社内からのリークで発覚したもの。他の社員が仲間のやったことをリークするはずもない。「会社がやっている」と思うからこそリークしているはずである。
 その事件も冷めやらぬうちに、京都で、労働者派遣法違反事件が発生。派遣社員から告訴されたのである。地元ではテレビ、新聞で報道されていた。
 派遣切りが話題になっている最中、「3年継続して働かせたら、社員への登用をする」と法律で定められているのに、4年継続の派遣社員を解雇しようとして、訴えられたのである。
 当然、人事、法務から全事業所に指導すべきところを怠っていたのだ。
 社内で「コンプライアンス」を叫びながら、足もとの本社では、「お座なりで、魂も入っていなかった」ことが証明されたのだ。坂本がいくらきれい事を言っても、誰も聞いていないということだ。
 この調子だと、何が起こるかわからない。
 企業を長く繁栄を続きさせるためには「徳で治めて道」しかない。「覇道」坂本が行なっているような、権力によって人間を管理し、金、人事で人の鼻面を取って引き回すような経営が長続きするわけがない。いかに、能力、権力があっても人格に劣る人間に「心服」するものはいない。古今東西、徳に反するものが長らえたことはない。
 孔子いわく「利を追うとき、義を思え」と。
 企業トップは
「利を追うのは当然であるが、人間としての歩むべき道を踏み外してはならない」
 ということを教えている。
 そのためにトップは、常に学び、人格・人間力を養わなくてはならない。自分の利益だけを考え、権力でしか治めることができないようでは、人心は離反し、やがて衰退へ向かっていくことだろう。

(つづく)

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